鈴麻呂日記

50代サラリーマンのつぶやき

リスベットの復讐譚の終着としては悪くないかな?:読書録「ミレニアム6 死すべき女」

・ミレニアム6 死すべき女<上・下>
著者:ダヴィド・ラーゲルクランツ 訳:ヘレンハルメ美穂
出版:ハヤカワ・ミステリ文庫(audible版)

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スティーグ・ラーソンが最初の三部作を書き、彼の死を受けてラーゲンクランツが書いた新しい三部作の最終巻。
リスベット・サランデルの復讐譚が終わり、ミカエル・ブルムクヴィスト/リスベット・サランデルの冒険にも一区切りがつきます。

 

この新3部作。
第2部(復讐の炎を吐く女)まではフォローしてたんですが、ちょっとその作品がピンと来なかったので、この最終作が翻訳された時(2019年)にはスルーしちゃったんです。
まあ「何が悪い」ってわけでもないんですが、ラーゲルクランツはリスベットを深掘りし過ぎてる感じがあって。
僕にとって、「リスベット・サランデル」ってのは、究極の<謎>であって、圧倒的であり、闇の天使みたいな存在なんで、あんまり舞台裏(心情も含め)はあからさまにならない方が好みなんです。

 

それを思い直して手に取る気になったのは、1作目の「ドラゴン・タトゥーの女」がドラマ(Amazonプライムかな)でリメイクされるというニュースを聞いたのと、本作がaudibleになったこと。
やっぱりリスベットが好きなんですよね。僕は。

 

 

ストックホルムの公園で身元不明の男が発見され、彼のポケットからミカエルの電話番号が出てきた。
その男に覚えのないミカエルは、法医学者からの示唆もあり、殺人の可能性を追いかける。
やがてその追跡は国防大臣の過去に繋がっていく。
一方、リスベットは双子の妹カミラとの決着をつけるべく、ロシアの彼女を追い帰る。
決定的瞬間に銃を構えたリスベットの脳裏に、思いもかけぬ過去の記憶が蘇る…

 

 

…と言った感じ。
ミカエルが追いかける事件は、国防大臣の過去につながり、エベレストで起きた過去の悲劇の舞台裏がやがて炙り出されます。
例によって「ロシア」が影を落とすのは、スウェーデンという国の現代史においては避け得ないことなんでしょうかね。
作者のラーゲルクライツは登山も趣味の一つとしているらしく、過去パートでのエベレストのシーンはナカナカ臨場感があります。

 

ただまあ、それがリスベットの物語と緊密に絡んでくるか…というと、そこまででもない。
ミカエルの依頼でリスベットは身元不明の男の過去を追い、それが国防大臣に繋がっていく過程は興味深く、面白いんですが、リスベットが直面する復讐の旅は、その事件とはそれほど関係はないんですよ。
リスベットの父親(ザラ)の過去を考えれば、もっと関係させて、それがリスベットの復讐の計画に影響する…なんて線もあり得たと思うんですが、そこまでの絡みはありません。
まあ、それをやると最初の3部作と被っちゃうってのもあったのかもね。

 

 

とはいえ、最終的にリスベット/カミラとの対決にはミカエルが重要な意味を持つようになり、<囚われのプリンセス=ミカエル>を前に、二人の決着はつきます。
あっさりしてる…との見方もあるかも…ですが、どこまでもこれを引っ張ってもね〜
…というので、僕はこれはこれで良かったと思います。
ラストの二人についても、いい余韻なんじゃないですかね。

 

 

ミカエルくんのモテっぷりは相変わらずで、この設定が必要だったかどうかについては一考の余地あり…とも思いますがw。

 

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