鈴麻呂日記

50代サラリーマンのつぶやき

書かれなくても良かったけど、面白い:読書録「ミレニアム4」

・ミレニアム4 蜘蛛の巣を払う女
著者:ダヴィド・ラーゲルクランツ 訳:ヘレンハルメ美穂、羽根由
出版:早川書房

ミレニアム 4 蜘蛛の巣を払う女 (上)

ミレニアム 4 蜘蛛の巣を払う女 (上)

  • 作者: ダヴィドラーゲルクランツ,スティーグラーソン,ヘレンハルメ美穂,羽根由
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2015/12/18
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
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ミレニアム 4 蜘蛛の巣を払う女 (下)

ミレニアム 4 蜘蛛の巣を払う女 (下)

  • 作者: ダヴィドラーゲルクランツ,スティーグラーソン,ヘレンハルメ美穂,羽根由
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2015/12/18
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
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作者の急逝によって「3部作」で完結されたと思われていたシリーズの「まさか」の新作。
亡くなったスティーグ・ラーソンは「4作目」を一部書いていたとの情報もありましたが、本作はそれを受け継いだ作品ではないようです。(事実婚のパートナーと遺族の間に色々あったようですから、そこらへんも影響してるんでしょうか)


個人的には「3作目」を読んだ時に、それはそれでまとまりがあって、「続編はなくてもいいんじゃないかなぁ」と思った覚えがあります。確かに幾つかの「謎」は残されてましたし、作者も続きを書くつもりがあればこそ、そういう「余地」を残してたんでしょうが、結構感動的な〆でしたからね。


しかしながら出てしまいました、「第4作」。
「う〜ん、どうだろう」
と思いつつ、買っちゃいましたが、結果的には
「面白かった」。
シリーズ最大の魅力であるドラゴンタトゥーの女「リスベット・サランデル」も、北欧的ダメ男「ミカエル・ブルムクヴィスト」も、しっかりと魅力的に描けています。
ストーリーは予想通り、「妹」の登場でしたが、悪くない扱いだと思いましたね。NSAなんかを絡めた展開も、前シリーズの後半の「風呂敷」を引き継いでる感があってw、グイグイ読まされました。


もっとも「これって前も見たような」って感じのシーンもありますけどね。
ラストシーンなんかは1作目・3作目とデジャブになってて、もう一工夫あっても…と思いました。
前シリーズが1作・2作・3作と作品のトーンを変えつつ、ドライブ感満載で引っ張ったのと比べると、本作は前シリーズの「いいとこ取り」って感じもあります。ハリウッド映画か2作目が本作になるという情報もありますが、「分からなくもないかな」って感じです。
スター・ウォーズのエピソードⅦを見たルーカスが、
「自分の考えてたのとは違う」
とか言ったって話もありますが、泉下のラーソンが本作を読んだら、
「自分が考えてたのとは違う」
って言うかもw。


まあでも「シリーズ化」を考えた時、オリジナリティっていうのは「諸刃の剣」なんでしょうね。スター・ウォーズのエピソードⅠ〜Ⅲを巡るあれやこれやは、そういう面があると思っています。
だからシリーズ化を前提とした時、ある種の「総括的」な作品が必要となるのは仕方がないのかもしれません。
エピソードⅦしかり、本作しかり。
そしてその「制限」を前提とすれば、両作とも十分合格点を超えていると思います。
そして「次が問題」って点でも…。


まあでも、本作が十分楽しめる作品なのは確かです。
そういう意味では「シリーズの再開」がこういう水準でなされたことは喜ばしいこと。続編を楽しみにさせていただきましょう。
「スター・ウォーズ」と同様にね。