鈴麻呂日記

50代サラリーマンのつぶやき

正当に評価されなかった者のリベンジ:映画評「ロスト・キング 500年越しの運命」

リチャード3世の遺骨が駐車場の下から発見された…というニュースには覚えがありました。
その実話を映画化した作品。
妻の希望で観に行きました。

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フィリッパ・ラングレーは2人の息子を持つ主婦。別れた夫と協力して子育てをしているが、「筋痛性脳脊髄炎(ME)」を患っていることから職場では正当な評価を得ずにいる。
ある日、シェイクスピアの「リチャード3世」を感激した彼女はリチャード3世に興味を持つ。
「醜悪で悪辣な王」として描かれるリチャード3世ですが、決してそうではないのではないかと、彼女は考える。
「リチャード3世協会」に参加し、研究や調査を進める中で、彼女はある駐車場にリチャード3世の遺骨が埋められているのではないかと思い至る。
彼女は資金集めや組織づくりを開始し、駐車場の発掘調査に着手。
ついにはリチャード3世の遺骨を発見する。

 

正当な評価を受けることができない主婦が、勝者の歴史の中で事績や人物像を歪められた歴史上の人物(リチャード3世)に共感を持ち、紛失したとされた遺骨を発見するとともに、彼の歴史的な評価を覆し、正当な評価をもたらす…という流れですね。
映画としては幻影のリチャード3世が登場したりして、興味深く物語が展開するとともに、フィリッパ自身の「危うさ」のようなものもチャンと描かれていて、結構バランスの取れた内容になっていると思います。
まあ、「成功譚」なのは成功譚なんですけど。
(遺骨が見つかりリチャード3世は簒奪者ではなく、エリザベス女王も認める正式な英国王の一員となります。
大学に成果を奪われそうになったフィリッパ自身も、発掘の功績を讃えられ、勲章を授与されるまでになります。
彼らの歪められた評価は正されたわけです)

 

個人的には「簒奪者としてのリチャード3世の評価」っていう点については、
「え?あれって、歪められてた評価だってのは明らかになってたんじゃなかったっけ?」
ってのもあったんですけどね。
ジョセフィン・テイの「時の娘」(1951年)は、まさにそのことを証明した安楽椅子探偵小説の古典。
みんなアレを読んでれば…って、そんなに読まれてるわけじゃないのねw。
でもまあ、「リチャード3世」ってのは色んな意味で人気はあって、だからこそクラウドファンディングでの逆転劇があり得たんですけど。
知ってたら、僕も資金援助してたかもw。

 

基本的にはコメディタッチなので、見やすい映画になっています。
それでいて、心を揺るがされるところもあって…
いい映画だと思いますよ。
見つけてくれた妻には感謝、です。

 

#映画感想文

#ロストキング500年越しの運命