・お探し物は図書室まで
著者:青山美智子
出版:ポプラ文庫
通勤電車で読んでいて、事務所のある京橋駅で降りるとき、向かいに立っている30代くらいの女性を見ると、彼女も同じ本を読んでいました。
僕は出たばかりの文庫で、向こうは図書館で借りたハードカバーのようでしたが。
まあ、そこから何かの物語が始まるわけでもないんですがw、それだけ読まれてる本…ってことかもしれません。
21年の「本屋大賞第2位」らしいですから。
小学校に隣接する「コミュニティハウス」。
そこにある「図書室」の司書「小町さゆり」は、悩みを持って図書室を訪ねる利用者に、少し求めるジャンルとは違う本をレファレンスし、合わせて「付録」として羊毛フェルトを手渡す。
一見つながりの見えないその「レファレンス」が、悩みを持った利用者に新しい気づきをもたらす。
…みたいな話。
図書室を訪ねる利用者は、
「仕事にやりがいを感じられない20代の女性」
「起業を考えている30代の男性」
「育休明けに異動させられ、自分のキャリアに悩む40代の女性」
「自分が好きなことを仕事に活かせず、ニートになってしまった30歳の男性」
「定年で仕事から離れ、これから何をするか、見つけられずにいる65歳の男性」
…と年代も性別もバラバラ。
ただ共通するのは彼らの悩みは「働く」と言うこと、働く中で「自分」をどう位置付けるのか、と言うことで、それが小町さゆりのレファレンスの示唆で、背中が少し押される展開になります。
独立した短編なんですが、各短編の登場人物が他の話にも顔を出して、ゆるい連作短編になっています。
年齢的に言って、当然僕に刺さるのは「65歳の男性」と思ってたんですがw、ぞんガイドの話も少しずつ僕の心を動かすところがありました。
まあ、どう言う形であれ、そういう「悩み」に似たようなものを、この年齢になるまで僕も感じてきた…ってことかもしれませんね。
ある意味、広く年代をカバーした「お仕事小説」みたいなものでもありますから。
こう言う不思議なレファレンスをする司書の背景について、作中では少しだけ触れられています。
彼女自身の解釈としては、
<「でもね、私が何かわかっているわけでも、与えているわけでもない。皆さん、私が差し上げた付録の意味をご自身で探し当てるんです。本も、そうなの。作り手の狙いとは関係のないところで、そこに書かれた幾ばくかの言葉を、読んだ人が自分自身に紐づけてその人だけの何かを得るんです」>
いやいや、それにしちゃ、ピンポイントすぎるでしょ!w
ここら辺は変に説明なんかせずに、もっとファンタジーで誤魔化しちゃってもいいんじゃないかな〜と個人的には思いました。
魔女っぽい雰囲気がなきにしもあらずだしw。
「甘い」といえば「甘い」。
こういう物語、僕は嫌いじゃないです。
通勤電車で会社に向かう途中に「嫌な気分」にならなくてもいいでしょうw。
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