鈴麻呂日記

50代サラリーマンのつぶやき

スッキリ解決策…はない:読書録「誰も断らない」

・誰も断らない こちら神奈川県座間市生活援護課

著者:篠原匡

出版:朝日新聞出版(Kindle版)

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「格差」「貧困」「分断」…

アメリカで表面化している問題は、今後の日本にとっても他人事ではない重要問題と思っています。

…と言うか、多分もう「問題」になってきてるんでしょうね。

ホント、迂闊なことに、コロナ禍になるまで「日本における子供の貧困」の問題が、ここまで深刻になってきてるってことも知らなかったくらいなので。

 


<厚生労働省によれば、 17歳以下の子どもの相対的貧困率は 13・ 5%と、 7人に 1人が貧困状態にある。これは OECD(経済協力開発機構)加盟国の中でも最悪に近い水準だ。経済的な理由によって就学援助を受けている小中学生も 134万人に達している。

7人に 1人という数字は相対的貧困率であり、衣食住に事欠くような絶対貧困についての話ではない。ただ、経験したことをスポンジのように吸収する時期に、親の経済格差によって教育など様々な機会が失われれば、その影響は将来の教育格差や所得格差につながってしまう。それは、貧困の固定化である。>

 


ただ「格差・貧困が問題だ〜」と大声で言うばかりでなく、実際のところそれがどう言う状況なのか、「現場」ではどう言う取り組みがされているのか…そう言ったところが知りたいな、と思ってたところに本書の書評をネットで読んで、興味を持ってDLしてみました。

先進的な取り組みをしている「座間市」の事例。

でも、そこに「一発解決」の<答え>がある訳じゃないんですよね。

今ある「社会資源」を見つめ、具体的な問題の答えを探しながら、地道にその「資本」を活用する途を探っていく。

ここに書かれているのはそう言う話だし、それしかないんだろうな、と気付かされました。

 


まあ僕の勉強が足りなさすぎるっての痛感しましたけどねぇ。

「貧困問題」となると、「生活保護」がメインの問題だろう…と考えてきてたんですが(補足率の低さとかね)、それは間違いじゃないんだけど、その前段階で「生活困窮者自立支援」という取り組みが現実に進められているなんて、全然知りませんでした。

 


<生活保護制度の存在は知っていたが、生活困窮者自立支援法という法律ができたことも知らなければ、生活保護とは別の第 2のセーフティネットとして自治体が自立相談支援事業を進めていることも、自治体や民間団体が困窮者の自立に向けて奔走していることも知らなかった。>

 


それは作者も同様だった…ってところに多少の慰めはありますがw。

 


この「生活困窮者自立支援」の取り組み(自立相談支援事業)を、役所内の連携(役所を耕す)と、地元の諸団体との連携(地域を耕す)を広め、深めて行くことで、実効性のあるものとして成功例を積み重ねていく。

本書で書かれているのはまとめてしまえば「そう言うこと」だし、そのことに真剣に取り組み、奔走する人たちのことでしょう。

 


もちろん「自立」を前提とした取り組みがどこまでセイフティネットとしてワークするのかって懸念がないこともないし、こう言う取り組みが「人」が変わって行くことで形骸化して行くことにも不安があります。

取り組みの「難しさ」があるだけに。(本書では取り組みの実例も多く取り上げられていますが、正直言って、「安定」を求めて役人になるような人に務まるような仕事とも思えません)

でも「ここから」前に進んでいくしかないし、そこに「可能性」があることも確か、かな。

少なくとも「今」の「社会資源」(そこには自治体も含まれます)の活用という意味では。

 


リベラルの限界が言われて久しいし、僕自身もそのことを考えることが少なくありません。

でもこういう「現場」での地道な取り組みをサポートして行くことは、「リベラル」にとって重要なことなんじゃないかなぁ。

その向こうにこそ「リベラル」の<理念>があるんじゃないか、と。

…それを期待できるかどうかってのは…う〜ん…何だけどさぁ。

 


#読書感想文

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