鈴麻呂日記

50代サラリーマンのつぶやき

耳で聴くには情報量が多すぎるw:読書録「無理ゲー社会」

・無理ゲー社会 才能ある者にとってはユートピア、それ以外にとってはディストピア

著者:橘玲 ナレーター:寺田尚弘

出版社:小学館(audible)

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この本、発売された時に購入してるんですけどね。

ただ何となく手を出すタイミングがなくて、ズルズル…。

今回、audibleになってるのを見つけて、聴いてみることにしました。

小説は何作か聴いて塩梅もわかったので、他のジャンルも試してみようかな…と。

 


橘さんのスタンスとして、

「(世界的に支配的イデオロギーとなっている)リベラルに対する課題認識を持ち、最新の科学的知見をベースから、その欺瞞・不都合な事実を指摘する」

と言うのがあると思うのですが、本書もまあ、そのスタンスです。

(橘さんの言う「リベラル」は西洋社会でスタンダードなもので、日本でいう「リベラル」とは少しズレています。まあ、そのズレが日本の「リベラル」の問題でもあるんですが)

 


「PART1  『自分らしく生きる』と言う呪い」では「リベラル」が、その思想的帰結としてもたらした「自由/自己責任」がどんな風に社会的問題につながっているか、そのオオモトはどういう流れから来ているのか…について語られます。

「チャールズ・ライク」の話なんかは、なかなか興味深いです。

 


「PART2  知能格差社会」では<メリトクラシー>がもたらすディストピア的な未来像を語っています。

ここら辺はサンデルが指摘していることでもあり、その欺瞞的なあり方についての言及もあります。

ここで取り上げられる「マイケル・ヤング」の「メリトクラシー」と言う小説の予言性は驚くべきものがあります。(小説としては実に退屈なそうですがw)

橘さんは他の著作では「遺伝子の影響」を強く打ち出すことがありますが、本書でもそれに言及しつつ、結論として「進化論的リベラル」を打ち出すことで、「環境決定論と遺伝子決定論のあいだ」のスタンスを主張します。

 


「PART3  経済格差と性愛格差」が取り上げるのはトランプ現象の背景、そして「無敵の人」。

秋葉原無差別殺人事件の加藤死刑囚に関する記述は、僕自身があまりフォローしてなかったのでチョットした驚きもありました。

 


「PART4  ユートピアを探して」は「資本主義の後に来るもの」の考察。ベーシックインカム(UBI)・MMT・超富裕税等々、論じられている色々なアイディア・政策が紹介されています。

最後に紹介される「メカニカル・デザイン」は「新しい共産主義」みたいな話で、「ほぉ」と思わされました。

 


「経済格差は制度的に解消されていくかもしれないけど(かなり難しいのは確か)、そうなっても性愛格差・評判格差は解消されない」

 


この世界がそう言うものだと認めて、その中でどうやっていくのかを考えていくしかない…と言う何ともウンザリする結論だったりします。

それを否定するだけの知識も経験も見通しも僕にはありませんが。

 


…ってまあ、聴き終わった後、「目次」を見ながら(audibleのアプリで確認できます)上記のような「感想」を書いたんですが、目次をチェックして、ようやく書けたってのが正直なところですw。

本だったら、ちょっと理解が追いつかないところは戻って読み直したり、重要な文章なんかはメモしたりできますが、audibleだと出来ませんからねぇ。(正確には30秒戻しの機能とか、クリップ・メモの機能があるんですが、ながら聴きしてる時に、そんなの頻繁にしませんw)

聴いてる時の印象だと、

「いやぁ、盛り沢山やなぁ」

って感じ。

全体的な流れや論旨は分かりますから、決して「audibleに向かない」って訳じゃないんですけどね。

ここら辺、もうちょっと試してみます。

 


あ、本書はまあ、そう言う意味じゃ、現在の社会問題に関して幅広い側面からアプローチしてて、なかなか面白い本だと思いますよ。

橘さんっぽい「煽り」も抑え気味で、僕は好ましいと思いました。

…ん?

橘節に慣れちゃっただけかな?

 

 

 

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