・天使と嘘<上・下>
著者:マイケル・ロボサム 訳:越前敏弥
出版:ハヤカワ・ミステリ文庫(Kindle版)
上下巻の長編なんですが、読み始めたら、スルスル〜っとラストまで行ってしまいます。
…かといって、アクションとか、ドンデン返しの連続…って話でもないんですけどね。
<アイススケートで将来有望であった少女が殺される。
明るく、みんなに愛される少女であったと思われる彼女には、実は別の顔があって…>
扱われる事件はこんな感じなんですが、ミステリーとしては「ありがち」といえば「ありがち」。
で、その事件そのものは(多少の広がりはあるものの)<連続殺人事件>になるわけでもなく、ヒネリはあるものの、個人的にはそこまで意外性があるとは言えない決着になります。
じゃあ、なんでそんな話が上下巻になってて、しかも読むものをここまで引き込むのか。
それは一にも二にも「キャラクター」。
主人公二人のキャラクター造形と、その関係性にあります。
かつて自分の兄に両親と妹たちを惨殺された臨床心理士
誘拐され、虐待された過去を持ち、相手の嘘を見抜く異能力を持つ少女
この二人が出会い、お互いに「過去」を抱えながら、互いを認め合うようになり、「居場所」を見つけるようになる。
「事件」そのものの展開よりも、こっちの方がスリリングなんです。
二人の過去の方が「事件」よりも陰惨で異常ですし。
設定だけだと、少女の方は「ミレニアム」シリーズのリズベットを思い出させますが、本書のヒロイン(イーヴィ)は、リズベットの「強さ」を感じさせながらも、年齢以上の幼さを感じさせる「弱さ」を抱えています。
そのアンバランスさを、どうやって臨床心理士である主人公が受け入れていくか。
…物語の本筋はそっちの方かもしれません。
二人の間に「絆」が結ばれたところでこの物語は閉じられますが、少女の「過去」は、まだ「謎」に包まれたまま。
そちらの方は「続編」で…。
って、いやぁ、早く読ませてください!
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