Netflixオリジナル。
600年ぶり(見方によっては7百数十年ぶり)となる「ローマ教皇生前退位」(事例としては3例目)を背景に、退位したベネディクト16世と新教皇フランシスコの「対話」を物語とした作品。
確かに「歴史的」ではあるが、特段激しい政争やクーデターがあった訳でもないので(それにいたる背景にはドラマチックなものがあるけど)、
「なんとも地味な…。Netflixだからできることやな〜」
と思ってたんですが、どうしてどうして。
ドラマチックかつエモーショナルな作品でした。
「史実」としては退位表明前に2人が面談した事実はないとか。
ただ2人が交わす台詞は、2人の発言や著作をベースとして組み立てられており、「全くの想像/創造」でもないとのこと。
「実話に着想を得た」というのはそういうことですね。
「物語」としては、「退位」を決意したベネディクト16世が、正反対の立場であるフランシスコを「後継者」として考え、呼び出し、対話を重ねる中から、フランシスコが抱える「罪の意識」に対して<赦し>を与え、新たな時代の「教皇」として導き出す…という構成になっています。
フランシスコが抱える「罪の意識」というのは、アルゼンチンの独裁政権時代の自らの振る舞いに対してあるわけですが、この描き方がなんともドラマチックで、かつ心が痛い。
同時に、ベネディクト16世の抱える「罪の意識」と「絶望」も(短い表現ながら)痛切なものがあり、アンソニー・ホプキンス(ベネディクト16世)、ジョナサン・プライス(フランシスコ)の演技力が深くエモーショナルに届いてきます。
いやはや、「地味」だなんて、とんでもない。
ただまあ、観るにはある程度の事前知識は要りますかね。
カトリックにおける「教皇」のポジション
はもちろんですが、ベネディクト16世が直面したローマ・カトリック教会の危機としての
バチカン銀行のマネーロンダリング問題
司教による性的虐待問題
…ここら辺についてはWikipedia程度の知識はあったほうが良いでしょう。
またもやNetflixおそるべし…の一作でありました。