鈴麻呂日記

50代サラリーマンのつぶやき

ホントは行って、経験してみないとね:読書録「つまらなくない未来」

・ブロックチェーン、AIで先を行くエストニアで見つけた つまらなくない未来

著者:小島健志  監修:孫泰蔵

出版:ダイヤモンド社

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最近ちょっと話題の「電子国家エストニア」に関する本。

入れあげてる孫泰蔵さんがインタビューに答えたりしてて、何だか「未来国家」っぽいけど、今ひとつ全容が掴み難いエストニアの電子国家戦略について、概要が説明されています。

まあ、こういうのは(中国やシンガポールの進展具合と同様に)ホントは自分で行って経験してみなきゃ大きなことは言えないんですがね。

出不精なんで、本読みでその気になっておこうかとw。

 

「エストニア」はバルト三国のひとつで、フィンランドとロシアに隣接してる国。

面積は九州くらいで、人口は130万人と福岡と同じくらい。

建国100年ですが、91年にロシアから独立したばかりで、ある意味「若い国」でもある。(一方で高齢化も進んでいるんですが)


…ってのが国としての概要でしょうか。

ロシアからの独立時に、エリート層がごっそり抜けてしまった(ロシアに帰った)ため、国を作り直す必要があり、そこから若い層を中心として、IT戦略を国家として選択し、電子国家への道を選択した。

…ってあたりは、

世界の帝国主義の流れに危機感を持った江戸末期の若い志士たちが明治維新を起こし、「近代国家」の設立に向けて「富国強兵」に邁進した、

な~んてあたりのことを想起させられました。


まあ「国家規模が小さい」とか、「政治制度が脆弱だったから手を入れやすかった」ってことはあるにせよ、「だから日本では出来ない」って話じゃないでしょうね。

その前提は前提として、「じゃあ日本だったらどうするのか」、それこそ「つまらなくない未来のために」ってのが本書の読み方だろうと思います。


電子政府の素晴らしさは分かるとして(24時間365日、99%の行政サービスを受けることができる。こちらから申請をしなくても(出産とか)、行政が自動的に福利厚生制度を適用する。…なんて素晴らしい!)、「へえ?」と思ったのはこんなこと。


・基本的なIT技術はそれほど凝ったものじゃない(ベースとなっているエックスロードというシステム等)

・「Skype」の開発技術はエストニアの技術者に寄るところが大きくて、(そこで資産を作った)開発メンバーを中心にエコシステムが出来ている

・中央集権的な中国に比べて、民主主義的な透明性をすごく大切にしている


IT技術に関しても、技術力はもちろん高いんでしょうが、プライバシー情報の扱い方が非常に独特で(データは個人のものであり、個人がコントロールできるべきという思想に支えられている)、かつ「使用者の利便性を第一にシステム構築し、運営する」という、なんだか「民間企業」的な発想で行政サービスが運営されてるところが新鮮でした。

よく考えたら「国民主権」なんだから、至極当たり前のことなんですけどねw。


<もし政府に透明性がなければ、国民は政府を信用することができません。政府は国民が賛成していなければ決定を下すことができません>


エストニアの女性大統領の言葉。

そういえば女性が政府でも民間でも活躍してるイメージも本書にはあります。

さて翻って日本のことを考えますと…。


規模やスピード感を考えると、エストニアに倣った仕組みの導入は(本書でもコメントされていますが)自治体レベルでスタートするのが一番でしょうか。

実際、福岡なんかは視察に行ってるようですし、あそこのアグレッシブさを考えると、ちょっと期待できます。

大阪はどうかな~。

「都構想」なんかがこういう方向につながっていくんなら期待したいんですが、意外にアナクロなところもありますからね~、維新もw。

 

なんにせよ、ちょっとワクワクするような、未来に希望が持てる未来像を作るのは重要だし、「エストニア」にその一端が垣間見えるのは、確かに本書を読むと理解できます。

少なくとも「行政サービス」がこれだけ顧客本位で効率化されたら、そりゃ有難いですよ。

マジで期待したいです。


(「PCを使ったこともない」オッサンに、これを理解しろって言っても…ってのはもういいですかねw)