・未来を実装する テクノロジーで社会を変革する4つの原則
著者:馬田隆明
出版:英治出版(Kindle版)
コロナ禍で日本の統治機構があまりにも非効率で雑であったことが露わになっています。
いやもう、うんざりするくらい。
あまりにも明らかになっちゃったんで、「デジタル庁」設立となって、DXに舵を切ろうという流れになってるんですが、ワクチンのロジでも、アナログぶりが露呈している今現在…って感じです。
公平に言うなら、だいぶマシになってきてるとは思いますが…(去年の今頃なら、もっとひどい設計だったと思います)。
本書はコロナ禍の状況も踏まえながら、テクノロジーを如何に社会の中に組み込んでいくのか…について論じた作品です。
「4つの原則」と言うのは、
<インパクト><リスク><ガバナンス><センスメイキング>。
で、その「前提」として<デマンド>があります。
それぞれの関わり方については「あとがき」で簡略に作者が整理してくれています。
<デジタル技術というテクノロジーの社会実装を進めていくための考え方として、個人のデマンドがまず重要であるという指摘から本書の議論は始まりました。そしてデマンドを顕在化したり人々の協力を得たりするために、インパクトという長期的な理想を提示して、そこに至るための道筋を示すことが大事だと説明しました。インパクトは以降の議論のすべての土台となっています。さらにテクノロジーの持つリスクというダウンサイドに対処することや、テクノロジーを適切に扱うための倫理の大切さを説き、目指すべきインパクトを基にガバナンスという社会の仕組みを考えて、そのうえで個人のセンスメイキングを行っていくための方法論を描写してきたつもりです。そして実装されるデジタル技術自体が、ガバナンスやセンスメイキングの方法に対しても大きな影響を与えうることも示してきました。>
<デマンド>は社会や個人のニーズ
<インパクト>はそのテクノロジーを実装することによって、何がどう変わるのかの長期的なビジョン
<リスク>は、想定される不確実性を整理し、特定すること
<ガバナンス>は、その変化のリスクをどのように社会の中に組み込んでいくか、そのプロセスや仕組み・仕掛け
<センスメイキング>は、その変化を社会の構成員が受容できるような理解のあり方(納得感の醸成)
…みたいな雰囲気で僕は読みました。
違うかもしれんけどw。
本書は豊富な実例も引用しながら、「コラム」や「インタビュー」で実際の関与した人の考え方や、わかりやすい整理なんかもしてくれてて、読みやすく、わかりやすい仕立てになっています。
必要性や利便性が明らかなのに、なぜ実現しないのか?
そこにはこうしたビジョンの整理や丁寧なプロセスの必要性を理解していないから…と言うのがあるんでしょうね。
自分を振り返って、そういう反省もあったりもしますw。
本書内のコラムに「平時の社会実装、有事の社会実装」と言うのがあって、コロナ禍でテクノロジーが活用できなかった理由や、コロナ後の復興への提言がなされています。
<コロナ禍のあとには必ず復興のフェーズがあります。だからこそ、コロナ禍の最中にあるこのタイミングで、テクノロジーの社会実相を促進するための方法論をまとめて、それを広く共有する意義は大きいのではないかと考えています。>
このタイミングで本書が出版される意義はここにあるのかもしれません。
第4波が押し寄せる中で、とにかく今はこの波を凌ぐことが最優先。
…ではありますが、「コロナ後」も見据えたビジョンも示していかなければなりません。
放っておくと、戦後の闇市/バラックみたいな有様になりかねませんし。
政府・与野党・行政・官僚に強く期待したい。
…期待できるんかな?
(本書の作者やその周辺は割と行政に近いとこにいるようなので、ある程度の期待はできるようにも思いますが)
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