・教養としてのテクノロジー AI、仮想通貨、ブロックチェーン
著者:伊藤穰一、アンドレー・ウール
出版:NHK出版新書(Kindle版)
ダン・ブラウンの「オリジン」は、「シンギュラリティー」的な可能性に満ちた未来像を指し示しながら、そこに「AIの倫理性」と言うメスを切り込ませた、なかなか楽しいエンタメ小説でした。
最初読んだ時は、「シンギュラリティー」に関して「あんまり驚きがないなぁ」とも思ったんですが、考えてみたら「シンギュラリティー」が世の中で一般的に語られている概念だとも思えないので、そういう意味ではダン・ブラウンらしい「先取り」した小説だったと思い直しています。
本書はMITメディアラボの所長である伊藤穰一さんの新書になります。
その役職から、当然伊藤氏は「シンギュラリティ」に肯定的だと思い込んでたんですが、そうでもないんですね。むしろシンギュラリティーやシリコンバレーの「楽観的」と言うよりは、「単純すぎる」思想や考え方には批判的で、より思想的な深まりを主張しています。
もちろんテクノロジーに対しては肯定的なスタンスなんですが、何でもかんでも「テクノロジー」が解決してくれるわけじゃない。
そういう意味で言うと「オリジン」の作品的なスタンスに結構似たところがあるんですよ。
「副読本」と評したのは、そう言う意味です。
伊藤氏には「9プリンシプルズ」と言う作品が少し前にあったんですが、あちらのほうは結構抽象的な概念を論じている本で、ちょっとわかりにくいところがあったんですけど(まあ僕の理解力の問題とも言えますが)、http://d.hatena.ne.jp/aso4045/touch/20170921/1505946335本書はかなり具体的で分かりやすく、興味深く読めました。
取り上げている範囲も、「教育」や「東京オリンピック」なんかにも触れていて、幅広いものがあります。
「文化」をキーにして、東京オリンピックで日本アピールすべきだと言う考え方は、賛同できます。そのことで日本のマインドセットを変えることを狙いたいってのもいいですね。
そうであれば、オリンピックを日本で、この時代にやる意味もあるように思いますから。
まぁ、個別には意見が違うところももちろんあるんですけど、全体的には僕はこういう考え方は好きです。
やっぱり、「未来」は明るく考える方が良いじゃないですか。
「オリジン」を読んで、「具体的には今、どうなってんの?」と興味を持たれた方にオススメします。