鈴麻呂日記

50代サラリーマンのつぶやき

言うは易く行うは難し:読書録「『教えないから人が育つ』横田英毅のリーダー学」

・「教えないから人が育つ」横田英毅のリーダー学
著者:天外伺朗
出版:講談社(kindle版)

「教えないから人が育つ」横田英毅のリーダー学 (人間性経営学シリーズ)

「教えないから人が育つ」横田英毅のリーダー学 (人間性経営学シリーズ)


先週会社で開催した「経営品質」に関するセミナーで「ネッツトヨタ南国」が題材として取り上げられていました。まあかなり有名な会社で、何年か前にほかの機会にも題材として学んだ覚えがあるんですが、改めて思うところがあり、電子書籍化されてる本書をさっそく読んでみました。


「ネッツトヨタ南国」のすごいところは色々ありますが、個人的には「社員の自主性を最大限発揮させることができる組織」ってところが気になるところです。
本書の切り口も、まあそういうところ。
それを支える経営思想(理念)、そのための仕掛け、採用と育成への考え方etc、etc
刺激的で考えさせられる内容がバンバン出てきます。
本書の対象は基本的には「中小企業経営者」だと思いますが、私のような管理職にも多くの気づきを与えてくれます。
とは言え、「じゃあやってみたら?」と言われても、「う〜ん」ってところも少なくないですけどねぇ。


論理的に整理されているというよりは、理念に支えられた有機的な経営をされておられるのであんまりこういう整理には意味がないとは思うのですが、「ネッツトヨタ南国」のベースにあるのは、まずは「社員が幸福になれる会社」という「目的」。
このために理念を共有できるような人材を「採用」し、現場の中で共に働く中からコーチングによる「考える力を伸ばす育成」(したがって「チーティング」=「教える」という手段は極力避けられる)を行うとともに、社員の自主性を育てるような各種の仕掛け(アンケート、イベント、お店作り、etc)を複層的に設けつつ、その運営そのものも社員の自主運営にゆだねる・・・。
こんな感じでしょうか?
そのパーツパーツが実に考えられていて、本書で具体的に紹介されている一つ一つに唸らせられました。
会社でのセミナーは割と組織論的なアプローチだったのですが、本書の方は「人材育成」論的アプローチ(「教えない」ので一般的「人材育成」とは違うんでしょうが)。
別に狙ったわけではないんですが、補完的な内容だったと思います。


「目的」と「目標」
「問題解決」と「問題対処」


ここら辺は今考えていることともつながっているので、頭の整理にもなりましたしね。
「問題対処」と「問題解決」の割合について、「20:80」といった話が出てくるあたりも、「なるほど、ビジネスなんだからそうだよな」と改めて気づかされた思い。
当たり前ですが四六時中「人材育成」に走り回っとるわけじゃないんですなw。(すべての裏にその意図があるとはいえ)


<だからといって理念的なことばかり追求していたら、会社はやはり潰れます。理念を追求するためには、ちゃんと売り上げが上がり、利益が出ていなくてはいけない。どこが悪いか見極めて、しっかり目標を達成することも無視できません。問題は優先順位なのです。目的というのは”質”を追求するもの。目標は”量”を達成するもの。目的と目標はニュアンスが違います。追求と達成もニュアンスが違います。追求は方角ですから、到達しません。>


簡単じゃないけどなぁ。(つい「目標」達成に向けた「言い訳」にしちゃいそうです)


本書自体は、元ソニーの役員だった天外氏の意見も結構挟まってて、ソニーの現状に対する批判やら「フロー経営」や「愚者の演出」といった「理論化の部分には違和感を感じるところもありました。
ただ作品としては講演・研修の内容をできる限り臨場感を残すように収めているので、横田氏の「割り切れない」部分なんかも読み取れるようになってて、なかなか誠実な内容になってるとも思います。
本書単体でどの程度伝わるかはなんとも言えませんが、僕にとっては非常に感じるもののある作品でしたよ。