・解錠師
著者:スティーヴ・ハミルトン 訳:越前敏弥
出版:ハヤカワ・ポケット・ミステリ(Kindle版)
今年の「このミス」「週刊文春」ともに海外部門で第一位を獲得した作品。
・・・と言うので買ったんじゃなくて、Kindleストアがオープンして少しした頃に「早川書房」のラインナップを見てて面白そうだったんで購入しました。
早川書房には是非とも積極的に(過去作も含めて)電子書籍化を奨めて欲しいと思ってるもんで。
でもさすがに「一位」を獲得する作品だけのことはあったね。
しばらくDLしてから置いてあったのを昨日から読み始めたんだけど、子供達の相手をする隙間時間でw読み終えてしまった。(おかげで妻も子供達も若干不満げだったりする)
途中からは次が気になっちゃって・・・ってのはエンターテインメント作品としては良質の証拠だろう。
高評価の最大のポイントは、本書がピカレスクロマンスでありながら青春小説になってるってとこだろう。「鍵」が持つ隠喩の部分もナカナカ感動的なんだけど、それも含めて「青春小説」の枠組みで語られることのセンシティブさが本書の読みどころなのは間違いない。
一方で「弱点」もまたソコにあるとも言えるかな。
17歳で裏街道に足を踏み入れる主人公がプロとして過ごすのはわずか数年。
それだけにプロフェッショナルとしての凄みとか、例えば「バーク」シリーズなんかにあるアンダーグラウンドの世界観なんかは、あまり描かれてない。
彼らを支配するボスとの対決の顛末もチョット呆気なさ過ぎるような・・・。
もっともそれ故にこそ主人公は「青春小説」の主人公としての瑞々しさを維持することが出来ているのであり、そこにラストの「希望」が活きてくるというのもある。
これがアンダーグラウンドにドップリつかって40年後に・・・みたいな話だと、そこに残ってるのは「諦観」と顔なじみになった「絶望」くらいだろう。「ワンス・アポン・イン・アメリカ」みたいにねw。(ま、そういう作品も悪くなさそうだけど)
そういう意味ではコレが「大傑作」なのかどうかは、僕には何とも言えない。
ただこの読後感が捨て難いのも確か。
だから「色々欠点はあるけど、これはこれで愛すべき作品に仕上がっている」ってのが僕の正直な読後感かなぁ。
手に取って損はない作品とは思います。