鈴麻呂日記

50代サラリーマンのつぶやき

30年経って、未だにトップパイロットって設定が一番ファンタジーなんだけど、それをトム・クルーズが演ると…。:映画評「トップガン マーヴェリック」

60歳近くになって、未だにハリウッドのトップスターを張ってて、新作が出るごとにアクションのレベルも更新し続けてますからね。

その「リアル」が作品のリアル感を支えています。

いやぁ、もう、むっちゃカッコよかったっす。

前作の時は「言っても、アイドルっぽいとこも」って僻み根性もあって言ってましたが、本作でガツンとやられました。

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一応、予習(復習)として、前日に「トップガン」もprime Videoで視聴。

「おお、久しぶりに見ると、やっぱ迫力あるなぁ」

と感心し直したんですが、「マーヴェリック」ではそれを遥かに凌駕する迫力。

実際に俳優を戦闘機に乗せてコックピットで演技させたとか、F/A-18を実際に飛ばしまくったとか、事前に情報は入ってて、

「いやぁ、CGでええんちゃうの?」

と思わなくもなかったんですが、やっぱ違うわ。

コックピットでの役者たちの緊張感とか、コックピット越しの<絵>とか、前作では見ることのできなかった<リアル>を体感することができます。

上演時間2時間11分?

あっという間でした。

 


まあ、「30年、マーヴェリックは何してたん?」ってのに、「<チャック・イェーガー>やってました」って導入シーンとか、「どうよ」ってとこもあるんですが(「ライト・スタッフ」のラストをなぞった展開ですから)、それも<リアル>さで納得させられます。

ちょっと笑えるしw。

 


ストーリーとしては、前作の最大の山場である相棒「グース」との関係(見直して、ここまでマーヴェリックの心を折る展開になってることに驚きました)を受け継ぐ形で、ドラマを作り上げています。

ドラマで見せる映画じゃないとは思いますが、それでもグッときちゃったなぁ。

さらにミッションの先にあるもの。

いやもう、これはネタバレ厳禁だよねぇ。

燃えましたぜ。

 


パンデミックの影響で、何回も劇場公開が延期になった作品。

トム・クルーズが「劇場公開」にこだわったようですが、そりゃそうですわ。

これは「大画面」で「大爆音」で見る/体感する映画です。

エキスポのIMAXで見ましたが、最高でした。

 


PS  ジェニファー・コネリー。かっちょええオバちゃんになってました。

 


#映画感想文

#トップガン

#マーヴェリック

#トムクルーズ

 

 

 

 

 

 

 

司馬遼太郎の反論を聞いてみたいな:読書録「戦国武将、虚像と実像」

・戦国武将、虚像と実像

著者:呉座勇一

出版:角川新書(Kindle版)

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本業以外でも、何かと色々大変そうな呉座さんの新作。

まあ、チョロっとその「場外戦」の気配を感じるところはないこともないけどw、基本的にはご本職に沿った内容になっています。

 


本書については「戦国武将」を取り上げて、その一般的な評価と、最新の学術的な評価を比較する…というのに加えて、戦国時代・江戸時代・明治・大正・戦前・戦後という中で、その評価がどのように変わってきたのか、今の評価はどういう風に成立してきたか…についても語っています。

(江戸時代は「徳川史観」、明治・大正は「維新史観」、戦前は「軍国主義」、戦後は「司馬史観」w。

それらの時代の制約が戦国武将の評価にどう影響したか、その影響を免れていたものはどういうものか…といった流れです)

作者の主眼は後者の方かな?

そのため、若干読んでて「モタモタ」してる感じもあるんですけどw。

 


取り上げられている武将は以下の7人。

 


・明智光秀

・斎藤道三

・織田信長

・豊臣秀吉

・石田三成

・真田信繁(幸村)

・徳川家康

 


僕自身は割と好きなんで、ここら辺の人物の学術的評価の変遷を全く知らないわけでもないです。

それでも「<豊臣秀吉>が<人たらし>だった証拠はない」ってのは「へえ?」って感じかも。

他の人物については、むしろ「歴史」や「社会」の流れ・情勢の中で<評価>が変わってきた…っていうのが興味深く読めます。

「なるほどね〜」という感じですが、戦前<織田信長>には人気がなかったってのは、ちょっと意外です。

 


それにしても、こういう話になった時、外せないのは「司馬遼太郎」の影響。

僕自身は、「まあ、小説だからね」と思ってるんですけど、それでもこんな風に日本人の歴史上の人物観に影響を与えてるってのは、「司馬遼太郎、恐るべし」w。

 


<歴史小説から人生の指針を得ようという人は、そこに書かれていることが概ね事実であると思っているのだから、歴史小説家には一定の責任が求められる。事実に基づいているが、あくまでフィクションである、と公言するか、史実か否かを徹底的に検証するか、の二つに一つである。真偽が定かではない逸話を史実のように語り、そこから教訓や日本社会論を導き出す司馬 太郎のような態度には、やはり問題がある。>

 


そこまで責任を求めるのはどうかとは思いますけどね。

ただ呉座さんとしては、「場外戦」のポイントの一つがここにあるだけに、言わざるを得ないってのはあるでしょう。

百田さんは「面白い話」を、確かに書きますから。

 


僕としては、こういう反論を踏まえて、司馬遼太郎さんがどういう風に応えただろうって思っちゃいます。

司馬さんはそこまで<決めつけ>をするような人じゃなかったように思うんですよね。

最新の発見があれば、それを踏まえて、ちゃんと考えを整理し直したんじゃないか、と。

その過程にこそ、見るべきもの、参考にすべきものがあったようにも思います。

 


…まあ、それが「小説の面白さ」に通じるか…は別ですけど。

伝奇小説に近いところからスタートして、後期につれて物語性が薄れていったことを司馬さんはどう思ってたんやろ。

これも聞いてみたいなぁ。

 

 

 

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#戦国武将虚像と実像

#呉座勇一

今野敏、新シリーズ。…またしてもw:読書録「機捜235」

・機捜235

著者:今野敏

出版:光文社文庫

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大活躍の今野敏さんの、またもや「新シリーズ」。

とにかく打率は安定しているので、安心感はあるんですが、既存のシリーズ(個人的には特に「隠蔽捜査」)の進み具合に影響が出ないか、ちょっと心配も。

まあ、冨樫義博(ハンター×ハンター)みたいに休筆してる訳じゃないからいいんですけどw。

 


で、本作は「機動捜査隊」を舞台にした新シリーズ。

基本は若手が配属されるはずの機捜に、定年間近の刑事がなぜか配属され…

という設定での連作短編集。

この刑事の<実力>が明らかになるのと、若い相棒とのバディ感が高まってくる過程が、連作の中で描かれています。

 


この定年間近の刑事。

年齢は「57歳」。

…いやぁ、同い年なんだよなぁw。

こういう作品の場合、若手の方に感情移入して読むのがデフォルトと思うんですが(彼の一人称になってるってのもあります)、流石に同い年ともなると…。

「ダメ刑事」だったんだけど、「あるキッカケで」…って設定なんだけど、「ダメ時代」のトラウマが…なんて、話もありますしね。

基本的には「な〜めて〜た〜」パターンなんだけどw。

 


まあ、今野敏。

安定して面白いのは間違いありません。

少し前に第2作が出版されましたが、すでに購入済み。

今度は長編のようです。

積読を少し片付けたら、手をつける予定です。

 

 

 

#読書感想文

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#今野敏

カモノハシの大冒険譚&楽園の崩壊:読書録「われらはレギオン4 驚異のシリンダー世界」

・われらはレギオン4  驚異のシリンダー世界<上・下>

著者:デニス・E・テイラー 訳:金子浩

出版:ハヤカワ文庫(Kindle版)

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「3」で人類救済に成功して、宇宙開拓に飛び出していったボブたち。

「3部作で終了」

…と思ってたら、「好評にお応えして」続編発表となったようです。

 

 

 

<3部作>では色々錯綜しまくってましたが、本作のストーリーラインは比較的シンプル。

 


・初期に行方不明になったボブのコピー(ベンダー)の行方を追う中で発見した異星人世界(副題の「シリンダー世界」がこれ)での「ベンダー捜索/救出」の冒険譚

・コピーを重ねるうちに差異が大きくなってしまい、考え方や思想、哲学にズレが生じてしまった「ボブたち」の軋轢と、その結果のボブヴァースの危機

 


この二つが並行して語られます。

異星人「クインラン人」は<カモノハシ>に似てるんですが、そのアンドロイドに憑依(?)したボブたちの冒険譚は、アクション満載でなかなか楽しませてくれます。

その世界の謎が、ボブヴァースの危機とどう重なっていくのか…ってミステリー仕立ての部分もあって、物語としてもドラマティックな展開になり、面白く読ませてもらいました。

 


オリジナルは死亡し、電脳世界での存在になった「ボブ」がコピーをどんどん繰り返し、VR世界とリアル世界(アンドロイドに入って)に独自の生態系(ボブヴァース)を作りつつ、異星人と人類の攻防に関与することになる。

…というのが先行する3部作のアウトラインですが、この「ボブヴァース」が僕は結構好きなんです。

まあ、感覚的には「攻殻機動隊」で草薙素子がネットの海に溶けていったような感じに通じるんですけど、「攻殻機動隊」シリーズ(特にアニメの方)ではなんとなくネガティブなイメージもあるネットワークとの融合が、「ボブヴァース」では(ボブの性格もあって)実に明るく、ヤンチャで、それでいて倫理観はある世界として描かれています。

VRとリアルを行き来しつつ、瞬時に物事を判断し進めていく展開が毎回気持ちいいんです。

本作では<ボブ>は1万人ほどになってますんでw、その推進力もナカナカですわ。

 


その「ボブヴァース」が大きく揺らぎ、危機を迎えるのが本作のもう一つのテーマ。

それでいて悲壮感はなく、「ボブじゃなくなりつつある」けど「ボブである」って対抗勢力たちとのせめぎ合いが、カラリと描かれています。

まあ、どっちも「大人になり切れない」ボブだからなぁw。

その過程の中で、ボブたちは人類や前3部作で庇護した異星人たちとの関係性も微妙な感じになってくるんですが、それもまた「カラリ」と描かれているのもボブならでは。

このシリーズを楽しめるかどうかは、この「ボブ気質」を楽しめるかどうかにかかってるってことですね。

(もちろん僕は大好き)

 


続編も計画されてるとのこと。

さてさて<ボブヴァース>はどうなっていくのかな?

楽しみです。

 

 

 

#読書感想文

#われらはレギオン

#驚異のシリンダー世界

 

 

 

 

テンポが良くて、サーッと最終話まで見ちゃいました。:ドラマ評「リンカーン弁護士」

マシュー・マコノヒーの映画版(2011年)、結構好きだったんですよね。

カッコいいけど、ちょっとチャラい感じもあって、でも実は芯が通ってる…ってマコノヒーの「ミッキー・ハラー」が良かったので、ちょっとモサい感じがしなくもないwマヌエル・ガルシア=ルルフォのミッキーはどうかなぁと、ちょっと懸念もあったんですが…。

いやいや、全然杞憂。

10話を結構なペースで見ちゃいました。(火曜日から見始めて、木曜に全話終了。3話/1日以上のペースですなw)

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「リンカーン弁護士」シリーズは、一つのメインとなる事件(本作ではIT長者の妻殺害容疑)をメインで追いかけつつ、複数の事件(裁判)をテンポ良く片付けていくのが基本的構図。

このドラマでも手際よく事案を捌いていくミッキーの姿が見どころの一つとなっています。車(リンカーン)を移動しながら片付けていくのが、テンポとスタイルを作ってるんですよね。

 


顧客のためには多少の汚い手を使うことは厭わない。

…でもその奥には譲れない線がしっかりあって、そのことが時にはミッキーを窮地に陥れたりもする。

 


王道の「ハードボイルド」からすると、ミッキー・ハラーには「軽さ」があるんですが、彼が内心で堅持している「譲れない線」が、「ハードボイルド」作品としてこのシリーズを位置付けています。

そのキャラクターが、二人の<元>妻や娘との親密な関係に貢献してるのですが、時にはそれが軋轢にもなる。

本作でも最初の妻マギーとの関係にそれが垣間見えます。

 


ラストの引きからすると、「シーズン2」は考えてはいるんでしょう。

ただNetflixはいろいろ厳しい話も聞きますからね〜。

シリーズの評判はいいから期待はしてるんですが、どうかなぁ。

それを待つ間はAmazonでオリジナルドラマになってる「ボッシュ」でも見るか?

…でも、あっちはシーズン7もあるし…

 

 

 

#ドラマ感想文

#リンカーン弁護士

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後ろめたさを抱えつつ、興味深く読ませていただきました。:読書録「政治学者、PTA会長になる」

・政治学者、PTA会長になる

著者:岡田憲治

出版:毎日新聞出版(Kindle版)

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「なぜリベラルは敗け続けるのか」の岡田憲治さんが、公立小学校のPTA会長を3年間務めた経験をまとめられた本。

「こんなPTA活動、おかしいやん!」

と義憤に駆られて飛び込んだものの、前任や他のメンバーたちの反発にあったり、一見不合理な活動にも「それにはそれなりの理由がある」ってことに気付かされたりしつつ、それでも「PTA活動を、幸せなものにする」ためにアレやコレや取り組む姿が、ユーモラスな筆致で描かれています。

 


もうね。

僕はほぼ100%「PTA活動」には関係してこなかったので(妻よ、すみません)、「後ろめたい」思いを抱えつつ、読み進めることになりました。

ぶっちゃけ、「PTAなんて、要らんのちゃう?」ってのが僕の感覚だったんですが(「考え」というほど踏み込んでないので)、「そういうもんでもない…というか、僕の考えてる<PTA活動>のイメージがおかしいんやな」と気付かされました。

その「おかしいPTA活動のイメージ」(やりたくないけど、やらなきゃいけないから、やらされる)が<現実>だったりするところに、「闇」があったりするわけですが。

 


読んでるうちに、「PTA」だけじゃなくて、日本社会における不合理みたいなものまで考えさせられるところがあり、振り返れば足元の自分の組織にも通じることがあったり…で、色々、いろいろ、考えさせられるものがありました。(「リーダー」と「オペレーター」の話とか、「PTA」の歴史的成り立ちとか)

一番響いたのはこんなトコだったりするかな。

 


<「この世の中のほとんどの人は、とくに、何も、別に、評価も、感謝も、褒められもしない、『何でもない』者だって思ってるんだよ。自分のことを。チチ君と違ってね」

「……」

「わかんないだろうね。自分はいつも評価されているはずだ、って考えている人には、そのへんのことが」>(「チチ君」は作者のこと。奥様の発言です)

 


僕だって、自分のことを「自分はいつも評価されてるはずだ」とは思ってないですけどねw。

でも『何者でもない』者だとも思ってない。…っていうか、あんまりそんなこと考えないw。

でも、この指摘は結構深いところに届いてるように思うんですよね〜。

最終的に岡田さんは、地域コミュニティや学校連合を支える先輩諸氏との<軋轢>に行き着くわけですが(やや言い過ぎw)、ここら辺もこの「何者たらん」って考えに通じるところあるんじゃないかなぁ、と。

まあ、現役保護者よりも、先輩諸氏の方が拗らせてるような気はするけど。

 


しかしまあ、僕も年齢的にはこの「先輩諸氏」に近いところに立ってますからねぇ。

そういう意味じゃ、「自戒」も含めて、いろいろ思うところもありました。

いや、ホント。

 


本書は前半が「PTA会長となっての奮闘記」で、後半は「コロナ禍に見舞われての苦闘記」になります。

マイナス面だけじゃなくて、「コロナ禍」は<要らないものを炙り出す>というプラス面もあったんですが、それでも「1年生」やその保護者をめぐる件には、ちょっとグッと来ちゃいました。

「学校一斉休校」については、僕は「やむを得ない」と考えている派ですが、「やむを得ない」からと言って、「全てをストップ」して良かったってわけじゃないだろうと。

そこで「やるべきことをやったのか」。

コロナ禍の総括としては、それが求められると思いますね。

政府・自治体だけじゃなくて、<自分ごと>としても。

 


<ボランティア団体><任意団体>として、「あるべき姿」にPTAをしていっこというのが、岡田さんの考えだと思うんですが、それをまとめた「10ヵ条」は秀逸。

 


<PTA「思い出そう、十のこと」

一、 PTAは、自発的に作られた「任意団体」です。強制があってはなりません。  

二、 PTAは、加入していない家庭の子供を差別しません。企業ではないからです。  

三、 PTAに人が集まらないなら、集まった人たちでできることをするだけです。  

四、 PTAがするのは、「労働」ではありません。対価のないボランティア「活動」です。 

五、 PTAのボランティア活動は、もともと不平等なものです。でも「幸福な不平等」です。  

六、 PTA活動は、ダメ出しをされません。評価はたった一つ「ありがとう」です。  

七、 PTA活動は、生活の延長にあります。家庭を犠牲にする必要はありません。  

八、 PTA活動は、あまり頑張り過ぎてはいけません。前例となって「労働」を増やします。  

九、 PTAは、学校を応援しますが指導はされません。学校と保護者は対等です。  

十、 PTAの義務は一つだけです。「何のための PTA?」と考え続けることです。>

 


本当にこの原則に基づいてPTA活動がされるとすれば、「やりたい人が、自発的に、積極的に活動をする」ってPTAが実現する…かも。

ま、やってみて、試行錯誤しつつ…ではあるでしょうけどね。

個別の話はいろいろあるから。

ただ、本書は「組織のメンバーに自発的に動いてもらうようにするには童したらいいのか?」って観点から読むと、「PTA」という枠を超えた示唆に富んでると思いますよ。

「ジェンダー」の課題が避けられなくなってきている組織であればあるほどに、です。

 


…って、何も「PTA活動」なんかしてこなかったお前が何言ってんねん…って話なのかもしれませんがねぇ。

ほんま、ごめんなさい…。

 

 

 

#読書感想文

#政治学者PTA会長になる

#岡田憲治

高度に組織化された「隣組」?:読書録「中国共産党 世界最強の組織」

・中国共産党 世界最強の組織 1億党員の入党・教育から活動まで

著者:西村晋

出版:星海社新書(Kindle版)

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「中国共産党」の組織の構成や機能について解説した本。

…と言っても、国家主席や党中央といった上部組織ではなく、地域コミュニティや職場内での共産党組織がテーマです。

また論調としては「思想」的なものは極力排しつつ、「機能」として<共産党組織>がどのようにワークしているのかを解説してくれます。

まあ、そうは言っても「思想」的なものへの言及を全くなくしてしまうことはできませんし、中国の教育機関で働いた経験を持つ作者だけに、それなりのシンパシーも働いているのはやむを得ないところでしょう。(作者自身、認識しています)

それでもできる限りフラットに書こうとしているし、その努力は報われてるとは思いますがね。

(中国で生活したり、働いたりする人には必読本かもしれません)

 


端的に言えば、「上意下達」の徹底のための組織がかなり末端にまで作り込まれている…と同時に、機能としては「下意上達」の機能もワークしているという感じでしょうか?

もちろん民衆の意見がストレートに党中央に反映する…というのとは違いますが、党中央が全く末端の状況を知らずに組織運営や判断をしているわけではないというのは分かります。

下部組織が地域社会の構成に組み込まれていて、社会運営や文化の醸成にも関係している…なんてあたりは、戦時中の「隣組」をイメージさせるところもあります。

あれよりは相当高度な組織化がされて入るようですが。

 


僕なんかだと、戦時中の日本みたいに、陸軍から来たワカランチンが、現場のこともよくわからずに「お国のため〜」とか言って、権力を振り回すようなイメージに中国共産党を重ねちゃうんですがw、(そういうところも汚職や賄賂の話なんかには垣間見えるものの)そこまで雑な組織ではなさそうです。

企業内の党組織と企業活動との関係なんか、なかなか興味深いところがあります。(そもそも党サイドの目的に「企業活動を拡大発展させる」という大命題がある)

まあ、基本的に優秀な人材を集めているっていうのもあるでしょうしね。

 


それでも僕自身は「中国の仕組みはうまくワークしないだろう」と思っています。

やはり「意思決定」の根幹が「独裁」(独裁者ではなく独裁党ですが)であることは、長期的には上手くいかない(少なくとも国民の幸福にはつながらない)んじゃないか、と。

でも、もしかしたら日本の少なからずの人が、こういう<末端まで実務的に意思統一ができ、俊敏に動くことができる組織>を求めてるような気がしなくもないかな。

「コロナ対策」の件とか、「ツイフェミ」の件とかを見てますとね。

「自分の考えで行動して、トライ・アンド・エラーを許容する」

…ってのは、ホント苦手なんですよね。

そういう意味では「こうなっちゃアカン」という事例として本書を読むってのもあるかもしれませんw。

「<正解>なんかない。<着地点>を模索して、トライ・アンド・エラーを重ねるだけ」

…そういう社会を目指さないといけないと思ってるんやけど。

 

 

 

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