鈴麻呂日記

50代サラリーマンのつぶやき

後ろめたさを抱えつつ、興味深く読ませていただきました。:読書録「政治学者、PTA会長になる」

・政治学者、PTA会長になる

著者:岡田憲治

出版:毎日新聞出版(Kindle版)

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「なぜリベラルは敗け続けるのか」の岡田憲治さんが、公立小学校のPTA会長を3年間務めた経験をまとめられた本。

「こんなPTA活動、おかしいやん!」

と義憤に駆られて飛び込んだものの、前任や他のメンバーたちの反発にあったり、一見不合理な活動にも「それにはそれなりの理由がある」ってことに気付かされたりしつつ、それでも「PTA活動を、幸せなものにする」ためにアレやコレや取り組む姿が、ユーモラスな筆致で描かれています。

 


もうね。

僕はほぼ100%「PTA活動」には関係してこなかったので(妻よ、すみません)、「後ろめたい」思いを抱えつつ、読み進めることになりました。

ぶっちゃけ、「PTAなんて、要らんのちゃう?」ってのが僕の感覚だったんですが(「考え」というほど踏み込んでないので)、「そういうもんでもない…というか、僕の考えてる<PTA活動>のイメージがおかしいんやな」と気付かされました。

その「おかしいPTA活動のイメージ」(やりたくないけど、やらなきゃいけないから、やらされる)が<現実>だったりするところに、「闇」があったりするわけですが。

 


読んでるうちに、「PTA」だけじゃなくて、日本社会における不合理みたいなものまで考えさせられるところがあり、振り返れば足元の自分の組織にも通じることがあったり…で、色々、いろいろ、考えさせられるものがありました。(「リーダー」と「オペレーター」の話とか、「PTA」の歴史的成り立ちとか)

一番響いたのはこんなトコだったりするかな。

 


<「この世の中のほとんどの人は、とくに、何も、別に、評価も、感謝も、褒められもしない、『何でもない』者だって思ってるんだよ。自分のことを。チチ君と違ってね」

「……」

「わかんないだろうね。自分はいつも評価されているはずだ、って考えている人には、そのへんのことが」>(「チチ君」は作者のこと。奥様の発言です)

 


僕だって、自分のことを「自分はいつも評価されてるはずだ」とは思ってないですけどねw。

でも『何者でもない』者だとも思ってない。…っていうか、あんまりそんなこと考えないw。

でも、この指摘は結構深いところに届いてるように思うんですよね〜。

最終的に岡田さんは、地域コミュニティや学校連合を支える先輩諸氏との<軋轢>に行き着くわけですが(やや言い過ぎw)、ここら辺もこの「何者たらん」って考えに通じるところあるんじゃないかなぁ、と。

まあ、現役保護者よりも、先輩諸氏の方が拗らせてるような気はするけど。

 


しかしまあ、僕も年齢的にはこの「先輩諸氏」に近いところに立ってますからねぇ。

そういう意味じゃ、「自戒」も含めて、いろいろ思うところもありました。

いや、ホント。

 


本書は前半が「PTA会長となっての奮闘記」で、後半は「コロナ禍に見舞われての苦闘記」になります。

マイナス面だけじゃなくて、「コロナ禍」は<要らないものを炙り出す>というプラス面もあったんですが、それでも「1年生」やその保護者をめぐる件には、ちょっとグッと来ちゃいました。

「学校一斉休校」については、僕は「やむを得ない」と考えている派ですが、「やむを得ない」からと言って、「全てをストップ」して良かったってわけじゃないだろうと。

そこで「やるべきことをやったのか」。

コロナ禍の総括としては、それが求められると思いますね。

政府・自治体だけじゃなくて、<自分ごと>としても。

 


<ボランティア団体><任意団体>として、「あるべき姿」にPTAをしていっこというのが、岡田さんの考えだと思うんですが、それをまとめた「10ヵ条」は秀逸。

 


<PTA「思い出そう、十のこと」

一、 PTAは、自発的に作られた「任意団体」です。強制があってはなりません。  

二、 PTAは、加入していない家庭の子供を差別しません。企業ではないからです。  

三、 PTAに人が集まらないなら、集まった人たちでできることをするだけです。  

四、 PTAがするのは、「労働」ではありません。対価のないボランティア「活動」です。 

五、 PTAのボランティア活動は、もともと不平等なものです。でも「幸福な不平等」です。  

六、 PTA活動は、ダメ出しをされません。評価はたった一つ「ありがとう」です。  

七、 PTA活動は、生活の延長にあります。家庭を犠牲にする必要はありません。  

八、 PTA活動は、あまり頑張り過ぎてはいけません。前例となって「労働」を増やします。  

九、 PTAは、学校を応援しますが指導はされません。学校と保護者は対等です。  

十、 PTAの義務は一つだけです。「何のための PTA?」と考え続けることです。>

 


本当にこの原則に基づいてPTA活動がされるとすれば、「やりたい人が、自発的に、積極的に活動をする」ってPTAが実現する…かも。

ま、やってみて、試行錯誤しつつ…ではあるでしょうけどね。

個別の話はいろいろあるから。

ただ、本書は「組織のメンバーに自発的に動いてもらうようにするには童したらいいのか?」って観点から読むと、「PTA」という枠を超えた示唆に富んでると思いますよ。

「ジェンダー」の課題が避けられなくなってきている組織であればあるほどに、です。

 


…って、何も「PTA活動」なんかしてこなかったお前が何言ってんねん…って話なのかもしれませんがねぇ。

ほんま、ごめんなさい…。

 

 

 

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