鈴麻呂日記

50代サラリーマンのつぶやき

明治の人たちはこれをどんなふうに楽しんで読んでたのかな?:読書録「それから」

・それから
著者:夏目漱石 ナレーター:西村健志
出版:audible版

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「なぜ働いていると本を読めないのか」の中で、谷崎潤一郎の「痴人の愛」は、新聞連載小説で、当時のサラリーマンたちに受けていた…みたいな話があったんですよね
「名作」と言われている小説も発表された当時には、世間受けするような物語であった…と言う点がちょっと意外な感じもあって、
「そういえば漱石の小説も朝日新聞に連載されてたんだったよなぁ」
と思い、改めて読んでみることにしました。
ただ、読み直すのじゃつまらないので、Audibleで聞くと言う形での再読となります。


「それから」はどうですかね? 40年ぶりくらい?
「こころ」のほうは社会人になってからも何回か読み直してるんですけど…。


オーディオブックで聞いても、実にわかりやすいのは、漱石の文章が難解でないことの表れだと思います。
なんといっても100年以上前の作品(1910年です)
それがすらすらと耳に入ってくるというのが驚きでもあります。
森鴎外じゃこうはいかないので、口語体は漱石が作ってきたっていうのは間違いないのかもしれないですね。


物語については、まぁそれほど印象が変わった感じはないです。
当時も主人公の代助については
「何やらいろいろな事を考えたり言ったりしてるけど、頭でっかちで結局のところは役に立たない」
って感じはあって、終盤の展開では、よっぽど相手の三千代の方が腹が座っていて迷いを立ち切っている
当時の新聞読者っていうのは、識字率のことなんかも考えても、社会的には知識人の部類に入ったんでしょうけど、代助のような「高等遊民」ではなかったでしょう
そんな人たちがこの展開をどういう風に読んでいたのか
まぁ世俗的な決まり事に対抗して、個人としての恋愛の情を貫こうことするあたりはドラマチックな感じがしたんでしょうかね。
三部作の前作である「三四郎」で、美禰子は世俗的な選択をするわけですが…。


総じて言えば「もっと大人になれよ」ってことかもしれませんが、そうなると、三千代を平岡に譲ったりはしなかったでしょうけど、それはそれで「こころ」の先生のように、後でぐだぐだと思い悩むようになってしまうかもしれない
考えすぎるとろくな事はない。
そんなことを漱石が言いたかったと言うわけでもないでしょうがw。


まぁでもなかなか面白い経験でした。
この調子で過去の名作をオーディオブックで聞いてみると言うのも悪くないかもしれません。
流れで行けば「門」かな?
でも何かあれはちょっと辛気臭かったような気も…。