・中野のお父さんと五つの謎
著者:北村薫
出版:文藝春秋
高校教師のお父さんと編集者の娘のシリーズ第4弾。
第4弾?
3作目読んだっけ?
…と思ったら、読んでました。「中野のお父さんの快刀乱麻」。
面白いんだけど、すぐに内容忘れちゃうんですよね〜
…って、前作読んだ時も書いてました。
<円紫さん>シリーズだと、どこか<人の闇>みたいなところに触れるとこがあるんですが、こっちの方は割と無邪気に「文芸ネタ」で楽しませてくれるんですけど、それだけにインパクトが薄いんですよね。
本作に収められているのは5つの短編。
「漱石と月」:<I love you>=<月が綺麗ですね>と漱石が訳したという「都市伝説」に関するあれやこれや。「銀の匙」につながるところがミソ。
「清張と手おくれ」:「点と線」を巡るあれやこれや。ポイントは<同時代>…かな?松本清張はミステリー作家じゃないんですよね。本質的に。
「『白波看板』と語り」:鬼平の先ぶれとなる短編「白波看板」と三遊亭圓生の話。確かに池波正太郎は楽しんだんじゃないでしょうかね。
「煙草入れと万葉集」:久保田万太郎、桂文楽、圓生をめぐっての「煙草入れ」推理から、<万葉集>の読み方に話が流れ、「落語」の伝承の話に。
「芥川と最初の本」:芥川と圓右の話に、正岡容が絡んできて、芥川と漱石の話に。一周回って「漱石」なのは狙い…?
個人的には「煙草入れと万葉集」が好きですね。
このシリーズ、そこまで心動かすもんじゃないんですけど(失礼)、ここで語られる「伝承」の話にはジンとくるものがありました。
まあ、古今亭志ん朝が「すげえイイ人やった」っちゅう話かもしれませんがw。(前作でも志ん朝は登場してた…はず)
「何を受け継いでいくのか」
「何をアップデートしていくのか」
立川談春さんなんか見てても、落語家にとってこれは大きいテーマなんでしょう。
「白波看板」と「煙草入れ」の2作はそこら辺に踏み込んだ好編と思います。
ま、単に僕が「落語好き」なだけかもしれませんがw。
続編。
ありますよね。
楽しみです。
読む時には本作のネタとか忘れちゃってるかもしれませんがw。