鈴麻呂日記

50代サラリーマンのつぶやき

「事件」より、刑事たちの「人生」の行方の方が気になります:読書録「P分署捜査班 寒波」

・P分署捜査班 寒波

著者:マウリツィオ・ジョバンニ 訳:直良和美

出版:創元推理文庫(Kindle版)

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ナポリを舞台にした、エド・マクベイン「87分署」シリーズにオマージュを捧げる「P分署」(ピッツォファルコーネ署)シリーズ第3作。

今作では、「兄妹」が殺された二重殺人をメインに、家庭内虐待が疑われる案件が並行して取り上げられます。

 


捜査の過程は「警察もの」らしく、地道でコツコツと積み上げていく感じ。

そして最後の1ピースを主人公格のロヤコーノ警部の「推理」が埋める…といパターンです。

「本格推理」じゃないけど、「足で稼ぐ」だけじゃない展開がエンタメとして「読ませる」内容になっています。

 


…なんですけど、3作目にもなると、「事件」そのものよりも、P分署の面々の「人生」の方が気になってきます。

捜査官として、欠陥を持ちながらも(それ故にP分署に「島流し」された)、数々の事件を解決していく中でそれぞれ優秀なところがあることが明らかになってくる一方で、その「私生活」においては、どこか「袋小路」に落ち込んでしまいそうな悩みを抱えている…。

 


ロヤコーノは過去の汚名の影のほか、2人の女性との恋愛模様に、ティーンの娘との関係

署長のパルマと、障がいのある子どもを育てるオッタヴィアとの「危うい」距離感

レズビアンのアレックスの恋愛関係と、父親の強い影響力から逃れるための足掻き

「自殺」を装った連続殺人を追いかけるピザネッリと、犯人であり友人でもある神父との行方

見栄っ張りで、女にだらしなく、向こう見ずなアラコーナの危うい言動

 


「事件」は解決しても、彼らの「人生」は解決しない。

この「物語」はどういう方向に転がっていくのか…

そちらがドンドン気になってきます。

 


気になってくるのに、翻訳のペースが…!

前作が21年5月発売。

本作が23年2月発売。

1年以上、開いてるやん!

シリーズはもう10巻まで描かれてるのに〜!

 


…と言うわけで、「満足」の読後感だけに、翻訳ペースの方にフラストレーションを溜めてしまう…という結果になっております。

もうちょい、なんとかなりませんかね。創元社さん。

 

 

 

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