鈴麻呂日記

50代サラリーマンのつぶやき

話題に乗ってみました。:読書録「すべて真夜中の恋人たち」

・すべて真夜中の恋人たち

著者:川上未映子 ナレーター:小林さやか

出版:講談社文庫(audible版)

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この作品が「全米批評家大賞」の最終候補作になったというニュースを読んで、audibleを検索してみたらあったので聴いてみることに。

流行りもんに踊らされるタイプなんですよね、結局。

ま、audibleを使うきっかけの一つが「もっと女性作家の作品を読もうか(聴こうか)」ってだったのもあります。(最近、忘れてたけど)

 


フリーで校閲をしているヒロインの静かだけど孤独な日々。

他人と関わり合うことにハードルを感じている彼女はアルコールの助けを借りて外の世界とようやく接触できるくらい。

その彼女の唯一の友人と言っていい編集者(女性)と、偶然カルチャーセンターの受付で出会った初老の男性との関係が、静かな水面に小石が投げ入れられたような小さな波紋のように描かれ…

 


みたいな感じでしょうか。

恋愛小説…なんだけど、激しい展開はなく、どこか不穏なトーンがありながらも、静かに描かれ、友人との関係が揺らぐとともに、その恋愛も静かに幕を閉じます。

 


いやまあ、「上手い」。

繊細で、美しく、読みやすい文章が、静かな物語を彩ります。

「いい文章ってのは、聴いても耳に優しいだなぁ」

それが聴き終わっての感想。

「夏物語」は前半の大阪弁のやりとりが楽しかったんですが、そういう「面白さ」みたいなものはこの作品にはあまりないのですが、その文書を聴きたくて先に進んじゃうようなところがありました。

ちょっと「村上春樹」を思わせるところはあるかな。(物語的にではなく、文章の力という点で)

 


物語としては、

「う〜ん、三束さんとの恋愛はこういう決着しかなかったのかなぁ…」

と思わなくもないんですけど(2人の静かな関係が僕は結構好きです)、その成立自体がある種のフィクションの上に成り立ってたってことが、必然的にこの決着を呼ばざるを得なかった…ってことなのでしょうかね。

そんなこと考えるような話じゃないのかもしれませんが。

 


賞を取るかどうかは分かりませんが、「読ませる(聴かせる)」作品なのは確かだと思います。

audible、ありがたいなぁ。

 

 

 

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