・1Q84 BOOK1,BOOK2,BOOK3
著者:村上春樹
出版:新潮文庫(audible版)
ハードカバーで出版された時、文庫化された時…に続いて3回目。
…だと思います。
今回はaudibleで、隙間時間にボチボチと聴いていました。
それでも終盤は気になって、一気<聴き>になちゃいましたが。
10歳のときに運命的な出会いをした少年と少女
それから20年、出会うことはなかったが、それぞれがそれぞれの人生を過ごし、
ふとしたキッカケで同じ<異世界>に転移してし、
そこで苦難を乗り越える中で再会し、
一緒の違う世界に再び転移し、ともに生きていくことを誓う
…みたいな話w。
まあ、「空気さなぎ」やら、「リトルピープル」やら、「ふたつの月」やらが登場して、テーマ的にはそっちの方が重要なのかもしれませんが、「ものがたり」的には実にロマンチックでハッピーエンド。
口の悪いどなたかが「大人向けラノベ」とか評してた気がしますが、分からんでもない。
ここまで書き込めた「ラノベ」は読んだことないですけどねw。(僕はラノベにさほど偏見はないつもりです)
僕個人としては、初期3部作(あるいは+「ダンスダンスダンス」)に次いで、村上春樹作品では好きな作品かもしれません。
「青豆」が好きなんですよw。
そのキャラ設定そのものが、ちょっと「厨二病」的なところがあるとも言えるかもしれませんが、まあそれはそれとして。
今回、この作品を聴く気になったのは、audibleが村上作品をオーディオブック化してるのをフォローしてて…ってのはあるんですが、川上未映子さんとの対談(「みみずくは黄昏に飛びたつ」)でコメントされてるところが気になって、ってのもあります。
<──長編小説で何か大きなものと戦うときに、『ねじまき鳥』では岡田亨とクミコが綿谷昇に立ち向かい、『 1Q84』では、青豆と天吾が何か大きな悪と立ち向かっていくわけですよね。その二つに共通しているのが、男性側の役割が、無意識の領域で戦うということなんです。
村上 そう言われてみればそうかもしれない。うーん、一般的な男女の関係とは役割が逆転しているのかな。よくわからないけど、フェミニズム的観点から見ればどういうことになるんだろう?
──これはよくある読みのひとつですが、男性が無意識の世界の中で戦い、現実の世界で戦うのは女性になっています。例えば『ねじまき鳥』では、生命維持装置のプラグを抜いて現実の綿谷昇を殺す、手を下して裁かれるのはクミコです。『 1Q84』でも、リーダーを現実に殺すのは青豆なんですよね。もちろんすべての小説をフェミニズム的に読む必要はないし、小説は正しさの追求を目指すものではないけれど、でもあえてフェミニズム的に読むとしたら、「そうか、今回もまた女性が男性の自己実現のために、血を流して犠牲になるのか」というような感じでしょうか。
現実世界の多くの女性は、女性であるというだけで生きているのがいやになるような体験をしています。たとえば、性被害に遭ったとしてもお前に隙があったからだと責められる。これはもう、女性が女性の身体を持っているから駄目なんだと、存在そのものを否定されているのと同じです。そんなこと思ったことないという女性もいると思いますが、その場合はきっと、システムによって完全に内面化されていて気づくことができないという可能性もあるくらい。だから、物語の中でも女性が男性の自己実現や欲求を満たすために犠牲になるという構図を見てしまうと、しんどくなるというのはありますね。
村上 うーん、たまたまのことじゃないかな、そういう構図みたいなのは。少なくとも僕はそういうことはとくに意識してはいないですね。ごく無意識的に、たまたまそういう物語になってしまうこともあるのかもしれない。>
まあ「青豆」や「クミコ」の役回りは確かにそうで、「岡田亨」も「川奈天吾」も実際に手を汚してないっちゃあない。
でも例えばこの役回りを入れ替えちゃうと、結局はマッチョな男の物語になっちゃうようなところがあって、そうなったらそれはそれでどうなんだろう…なんて思ったりもします。
(川上さんが言いたいのはそこまで短絡的ではないでしょうが)
ただ「1Q84」のラストの青豆と天吾の距離感や接し方にはチョット「ん?」ってところも感じたかな。
なんだか旧来の男女ポジションをなぞらえるような立ち位置に見えるところもあるな…と。
もっとも主導権はずっと「青豆」の方にあるんですがw。
まあ、作者(村上春樹)が男性なのは確かですからね。
フェミニズム的視点から見たら色々文句も出てくるのかもしれないw。
でも(川上さんも認めてるように)「1Q 84」や「眠り」で村上春樹としては驚くほど「女性キャラ」を深めてるんじゃないですかね。
それは「作家」として素晴らしいことだと思います。
「青豆」がカッコ良すぎるにせよw。
個人的には「1Q84」の<物語>的な面白さ…ってのを、もっと追求して欲しいなってのはあります。
「騎士団長殺し」も「門とその不確かな壁」も(一人称というのもあって)そこまで物語的なダイナミズムはないように思います。
なんかそれがチョット残念。
次の長編では是非ともそこら辺を…
…って、あるのかな?
「次の長編」
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