鈴麻呂日記

50代サラリーマンのつぶやき

「人間性」は暗黒森林に対抗できるか?:読書録「三体Ⅲ 死神永生」

・三体Ⅲ 死神永生<上・下>

著者:劉慈欣 訳:大森望、光吉さくら、ワン・チャイ、泊功

出版:早川書房(Kindle版)

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いやはや、もうなんと言っていいのやら。

前作「暗黒森林」を読んだときにも、その壮大なスケールにタメ息をつくばかりでしたが、本作に至ってはもう…。

「このラストから<先>があり得るのか?」

前作を読み終えてそう思ったし、多分トーンの変わった続編になるんじゃないかなと予想してたんですが、全く予想外れ。

ド「続編」…でしたw。

 


(ちなみに冒頭に1作目・2作目の簡潔なまとめがあります。

「あ〜、そういう話やったっけ」

とか思ったりして。

まあ、でもやっぱり読んだほうがいいですよ。1作目も2作目も)

 


翻訳版の出版が決まって、事前予約で購入したんですが、しばらく手を付けずにいました。

まあ、長いですからw。

でも読み始めると、物語の推進力にすぐに取り込まれ、

そのドライブ感の気持ちよさに、むしろ先を進めるのが惜しくなって、無理に読むペースを落としたりして、

それでも3日ほどで読み終えてしまいました…。

 


SF的な発想の壮大さには、多分「粗」もある

物語としても「う〜ん」ってところもある(「冬眠」はチョットずるいw)

オチについても…

 


しかしそれら全てを踏まえても、

 


「圧倒された」

 


これが読み終えての感想です。

(とか言いながら、ハードSF的なアイデアについては「はあ、そうですか」と流し読むしかなかったんですけどw)

 


文革によって人類に絶望した「葉文潔」

彼女を起点とする壮大なSFは、

極めて「人間的」な(そういう意味では一般の人でもある)「程心」

によって締め括られます。

 


葉文潔を絶望させた「人間性」は、暗黒森林が制する「宇宙」において「人類」を生き延びさせることができるのか。

 


そういう物語だったのかなぁ、とか思ったりもして。

 


このシリーズ、Netflixで映像化が決まっているはず。

いやぁ、むっちゃ楽しみですわ〜。

(「インターステラー」のスタッフとかが関係してくれると、なお面白そう)

 


<以下、若干のネタバレを含みます。間違いなく、「傑作」ですので、先に本編をお読みください>

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2作目の主人公であった「ルオ・ジー」。

本作でも彼は主人公(程心)との<対極>において重要な役割を担います。(もう一人、「トマス・ウエイド」とともに)

どっちかっていうとチャランポランなキャラだった「ルオ・ジー」が、こんなキャラに変貌してるとは…ってのも読みどころの一つ。

 


ただそのことで「程心」のキャラが弱くなってるってとこもあります。

ある意味、「人間性」の象徴みたいなところもあるので、仕方ない面はあるんですけど、

「葉文潔」

という、むちゃくちゃ印象に残る女性キャラクターを生み出した作品だけに、チョット惜しい感じもするんですよね〜。

なんかチョット「マッチョじゃないとね」みたいなノリも感じたりもしてw。

作者にそんな意図は全然ないとは思いますが…。

 


しかしこのシリーズの中国版って、どんな感じなんでしょう。

「基本エンタメ」

なのは間違いないんですが、そこここに共産党批判を感じるところも…。

 


なんか余計なことが心配になっちゃったりもしましたw。

 

 

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