・情報戦争を生き抜く 武器としてのメディアリテラシー
著者:津田大介
出版:朝日新書
ネットが個人に力を与えてくれた事は間違いない。
一方で、フェイクニュースやヘイトスピーチなど、社会のあり方に対するネガティブな影響が出てきてることも否めないでしょう。
巨大なプラットフォームの存在、格差の拡大なんかもそこには絡んできています。
本書は、そういったネットにおける言説に関わる「現状報告」と言えますかね。
週刊朝日の連載をアップデートしてまとめた作品のようです。
切り口としては、
「問われるプラットフォームの責任」
「情報汚染の正体」
「生き残りをかけた紙メディア、使命と倫理」
「信頼と民主主義を蝕むフェイク」
「ネットに蔓延するヘイトスピーチ」。
津田大介さんはスタンスとしてはリベラルよりかな?
ただネットメディアに深く関わってきた者として、比較的中立に情報整理してくれていると思います。
(まぁ、ネット保守から見れば「偏向してる」って一刀両断でしょうがw)
フェイクニュースやヘイトスピーチネットの情報を汚染させる勢力として、作者は以下の4つを挙げています。
①義憤に燃えた確信犯
②世論工作業者
③ビジネス目的のネットメディア
④中間層・善意の拡散者
①の層は精々1%程度。
それに乗っかる②③に④が利用される…という構図。
こうした「汚染」を回避するために取りうる手段は何か?
①「技術」で解決する(アルゴリズム等)
②「経済制裁」で解決する(広告の引き上げ等)
③発信者情報開示請求の改善で解決する(発信者の匿名性へのアプローチ)
④「報道」で解決する(既存メディアによるファクトチェック)
この複合的な取り組みを作者は提示します。
すべてはここ数年で起きていることで、起きてることも、対処策もOnTheWay。
時に目をつむり、耳を塞ぎたくなるようなこともあるけど、少しずつ事態が動いていることも確か。
本書で描かれているのは、おぼつかないながらも、その一歩一歩の記録でもあります。
10年前にはこんな風になるなんて思いもしませんでしたけどね。
ある時期自分の中にあった牧歌的な楽観主義は確かに失われています。
それでも人間にはこーゆー状況でさえも変え得る力があるのだと、だからこそコレ程もがいているのだと、僕は思いたいです。