鈴麻呂日記

50代サラリーマンのつぶやき

読書録「音楽配信はどこへ向かう?」

・音楽配信はどこへ向かう? アップル、ソニー、グーグルの先へ…ユーザーオリエンテッドな音楽配信ビジネスとは?
著者:小野島大
出版:インプレス(Kindle版)



「ミュージックマガジン」に連載されていた「音楽配信」を巡るコラムをまとめたもの。08年から13年に書かれたコラムがまとまっています。
先日のアマゾン日替わりセールで「199円」になってたもので、ポチッとw。
相変わらずAmazonにはやられてますが、これは個人的にはかなり面白かったです。この5年で音楽配信を巡る環境が大きく変わってきているのが再確認できます。
と同時に音楽シーンそのものが変質していることも…(悪い方にですが)。



基本的な流れは
レコード→CD/MD→着うた→PC配信→定額制
ですかね。
勿論、こういう風に一気に流れるわけじゃなくて、それぞれが重なりつつ移行したり、共存したりしてるわけですが、中核となる「新しい流れ」はこんな感じ。
この中で携帯電話をプラットフォームとする「着うた」が日本独自の「進化」形態で、それが「携帯電話→スマホ」の移行によって壊滅的な打撃を受け、そこに乗っかってた音楽ビジネスそのものまで打撃を受けている…という。
まあネット絡みのビジネスモデルには共通するような流れです。
それが音楽ビジネスの場合、日本独特の複雑な権利関係があって、そのことが流れの速さを緩めてくれる側面はあるものの、全体としての市場を痩せさせてるんじゃないか、と。
いろいろな人が指摘していることではありますが、改めて時代の流れに則して読むと、その感を強くします。



僕自身は作者のような「マニア」の側に身を置いてないので、「インディーズ」に目配りする興味の広さはないし、「音質」を追求するような趣味もありません。
そういう意味じゃ「ミーハー」なところから「音楽配信」を楽しんでいる訳ですが、そういう人にとって、この音楽配信を巡る流れは、
「面倒臭い」
だけですね。
「いつでもどこでも、好きな音楽が聴ける」
求める環境はコレですから。
その「好きな音楽」の裾野を広げるような努力をビジネスとしてはすべきだと思うんですが、既得権益を気にするあまり、どんどんマーケットを狭めているという。
今の流れは「音楽好き」を増やすような流れじゃないと思います。
本書で津田大介氏が
「年間に1枚しかCDを買わない100人より、年間に100枚CDを買う1人を一人でも増やす努力をすべき」
ってのは正論でしょう。



現状なら、僕はiTunesMatchに登録している過去に購入した自分の音楽ライブラリーだけで十分ですよ。
定額制のストリーミングサービスなんかは、そこに「新しい出会いの場所」を提供してくれるんじゃないかと期待してるんですが、その速度が余りにも遅くてウンザリします。その間に作り手の方がどんどんいなくなっていくんじゃないかなぁ。
まあこの歳になると、それでも困りはしませんがねw。



本書を読んで、色々な試みがされてることはわかりました。
マニアには既に色々な可能性が開かれてもいるんですね。それはそれで良いかな、と。
でもミーハーにはまだまだです。
そしてその不自由さが、「音楽」そのものから足を遠ざけさせているんじゃないか、というのが僕の危惧です。
「音楽好き」を育てる環境がやせ細ってきてるんじゃないか、と。
それがどっかで一気に突破されるんじゃないかって期待もないではないんですが…難しいかな?w