鈴麻呂日記

50代サラリーマンのつぶやき

読書録「Tweet & Shout」

・Tweet & Shout ニュー・インデペンデントの時代が始まる
著者:津田大介
出版:東京ニュース通信社(Kindle版)



少し前にダイヤモンドの特集記事を電子書籍化した「誰が音楽を殺したか?」を読んだ。
あの記事は「音楽業界」のデジタルトレンドへの対応の失敗を分かりやすく、概覧してくれていたが、逆に言えば「もう少し踏み込んで欲しいなぁ」という印象もあった。
本書は「そこからもう一歩」を論じてくれている作品。
その論者として作者は最適の人材じゃないか、と。
現在、音楽を巡る最大の課題は、結局のところ日本の「著作権問題」に収着する。この点において(作者自身も言ってるが)津田氏以上に踏み込んだ人物はちょっと見当たらないからね。
もっとも最近は作者の興味はソコから「政治」にまで進んでいるようではあるけど(本書の中でもそれに関するインタビューも含まれている)。



作者自身が考えているのは、「Spotifyのようなストリーミング型のサービスが普及し、iTunesでさえクラウド化/クラウドとの融合を志向する中で、ユーザーフレンドリーなサービスに音楽業界は対応せざるを得ないし、対応すべきである」という認識だ。
その流れの中ではクリエイターは「レコード会社」や「JASRAC」のような大きな「傘」に安住することは出来ず、自ら独立して、SNSを初めとする種々のサービスを活用しながらリスナーとの距離感を縮め、音盤の販売だけではなく、ライブや周辺ビジネスをも自ら展開して行く必要があるし、そうでなければ生き残って行くことは出来ない。

<このバスに乗ることができるか、それとも乗り遅れるか。あとはクリエイターの意識次第だ。>

いやはや、大変な時代になったもんです。



でもユーザーとっては嬉しい時代でもある。
バラカン氏が示唆したような一定期間視聴が可能なストリーミング型の放送が展開するようになると、音楽との接点の幅は一気に広がるからね。そのことが音楽ユーザーの裾野を広げて行けば、結果的にはミュージシャンにもプラスになるだろう。
リターンの大きい層は出にくくはなるだろうけど(そのことで音楽制作費は全般的に低下すると考えられる)、ランキングなんか見たらとっくにそんな時代になってるようにも感じられるしなぁ。。
周辺機器や技術のコスト低下で、2、30年前に比べたらコスト対比でのレベルは相当に上がっているだろうから、制作費の低下が音楽の水準を低下させることに直結する状況でもないだろうし。
これは「音楽」ということの「そもそも論」まで広げたら、ナカナカ興味深いところでもある。



そういう時代になったら、新しい音楽も古い音楽も、同じように享受する世代が生まれる訳だ。僕の子供達なんかはその可能性大。
そこからどんな音楽が立ち上がってくるのか。
次の興味はソコだね。

(それを僕自身が楽しめるかどうかは、何とも言えんけどw)