鈴麻呂日記

50代サラリーマンのつぶやき

前進はしてるけど…:読書録「コンビニ外国人」

・コンビニ外国人

著者:芹澤健介

出版:新潮新書

f:id:aso4045:20180702203941j:image

 

主張の多くはこの記事に書かれてますね。

f:id:aso4045:20180702204058j:image

http://gendai.ismedia.jp/articles/-/56296

「移民」としてカウントされないけど(国際基準では「移民」だけど)、実質上、今の日本は移民大国(現在は世界第4位とか)となってるってのはいくつかの本や記事で知ってたんで、

「これぞ不都合な真実」

とか思ってたんですが…。

 

そう言う単純な話じゃないな、と。

本書を読むときにも「不都合な真実」を探してたんですが、読み終えて「う〜ん」ってなっちゃいました。

 

もちろん「不都合な真実」もあります。

「日本語学校」を巡る貧困留学生ビジネスの構図はまさにそんな感じです。これは早急な手立てが必要でしょう。

一方個人的に「問題」と思ってた「外国人技能実習制度」。

確かに課題は大きいし、そこにも貧困ビジネスの網は深く張られている。

でも「手」も打たれつつあるんですよね。時間軸や効果の点での評価は評価として、行政が問題意識を持って手を打ちつつあるって言うのは、僕が思ってる以上でした。

怠けもんばかり…っちゅうわけじゃないんですねw。

 

ただその根本にある「大問題」。

日本の少子高齢化の急速な進展と、人口減少社会への移行。

ココに手が打てていない。

そうである以上、労働者不足の問題は解消されることがなく、その穴埋めとしての外国人労働者への期待は高まり、そこに「闇」が巣喰うことになる。

そこに目を背けていると、世界的な労働者獲得競争の中で日本は後塵を拝することになり、国家としての活力を喪う可能性も…。

 

<近い将来、日本に来る外国人減っていく。なぜかー。

短期的には、「学びながら働ける国」として魅力的だった日本の経済が交代すれば、当然、コンビニでアルバイトしていたような留学希望者が日本を目指す理由がなくなるからであり、同時に「外国人技能実習制度」を使って入国していたような人たちはもっと景気のいい国を選択するからだ。>

<長期的に見れば、これから人口が減っていくには日本だけではない。

(中略)

労働力不足に陥った国々で働き手の奪い合いがはじまる。そして、国境を跨いだ労働力の移動はますます激しく、いよいよ複雑になっていくだろう。

そんな環境の中で、すでに、“老体”となっている日本が勝ち残っていけるだろうか。老人ばかりの国で勉強したい、働きたいと思う外国人たちがどれほどいるだろうか。

おそらく私たちが考えている以上に事態は深刻である。>

 

「不都合な真実」はココにこそあるのかもしれません。

 

<留学生の事例を多く見てきた新聞記者の古川氏も「正直どうすればいいのか、出口がどこにあるのかわかりません」と言う。>

 

でも、手をこまねいていたら暗鬱な未来がやってくるだけですからね。

日本語学校制度の改革や、外国人労働者の労働環境の整備等やれることからやっていく。

でも、その前に必要なのは「不都合な真実」を率直に見つめること。

 

<国連などの国際機関では、1年以上外国で暮らす人はすべて「移民」に該当すると解釈している。(中略)

自民党が掲げた(中略)「移民」の定義については「世界的に見ても例のない奇妙なもの」だと述べている。

その定義とはー、「『移民』とは、入国の時点でいわゆる永住権を有する者であり、就労目的の在留資格による受け入れは『移民』には当たらない」というものだ>

 

「撤退」を「転進」と言ったり、「敗戦」を「終戦」と言ったり…

こんなことで、「不都合な真実」を見ないふりしても、事態は好転せんわな。

その「勇気」こそがもっとも必要なんじゃないかな〜と。

 

なんにせよ、実に考えさせられる一冊でした。