・労働者の味方をやめた世界の左派政党
著者:吉松崇
出版:PHP新書(Kindle版)
こちらのエッセイを読んでたら中で紹介されて手、ちょっと面白そうだったので。
<コロナを前にしたインテリの自己矛盾>
出版は2019年6月。
ただターゲットは「10月」の消費税増税反対にあったので、作品の出版意図からすれば、「失敗」だったのかも。(作者の主張は「半緊縮財政」「移民政策慎重論」で、その観点から欧米の状況が解説されるのが、本書の後半部分です)
ただ前半部分で展開されている「左派政党の変質」に関しては興味深いものがあるし、現在もテーマとしては通用するものがあります。
本書はピケティの「資本とイデオロギー」(現在、山形浩生さんが翻訳中とのこと)を下敷きにして、
「左派政党が労働者の代弁者から知的エリートの代表となったのはなぜか」
を解説してくれています。
今の日本だと「立憲民主党」、アメリカは「民主党」、イギリス「労働党」ですね。
まあ、日本の場合、立憲民主党を「知的エリートの代表」を言うのはどうかとも感じるんですがw、
「労働者や弱者の救済について具体的な施策を論じる以上に、マイノリティーや多様化社会、環境問題といった、倫理的概念的なイシューを熱心に論じる」
と言うと、「まあそうかな」って感じがします。
そして現在の新型コロナ対策に翻弄される現状を見ると、その姿は一層露わになってるように見えます。
いや、もちろん「LGBT」も「多様化社会」も「環境問題」も大事。
でも、今の状況においてまず優先順位第一なのは「感染の拡大と影響を防ぐこと」であり、それと並行しながら「経済的苦境に立っている人々を救うために奔走すること」でしょう。
だから「給付金引き上げに動いた」?
でも休業補償や給付金の引き上げは、「政府」が決めることであり、「自治体」が決めること。そして何よりも重要なのは「スピード」。
そこにどうこう言うよりも、「まずは支援を現場に届ける」。
これを最優先するのが「弱者のための政治」なんじゃないですかね?
金額をあげたり、基準を変えるように「陳情」することは、「後でもできる」ことです。
「我々が10万円を、マスクを持って、1件1件を訪問し、届ける」
…くらいのことを言わずして、どうする…と思うんですよ。(それが現実的かどうかは別として)
冨山和彦さんが言うように、現在、コロナ対策は「L経済(=中小・零細企業や個人事業主)」に極めて大きな打撃を与えています。
今後それは「G経済(グローバル経済)」「F経済(ファイナンス)」に及ぶ可能性が高く、そのことはさらに多くの労働者を厳しい局面に晒す可能性があります。
それは社会の中に「分断」と「格差」を拡大していく危機でもあります。
その時、どの政党が/自治体が「現場」を助けてくれるのか?
見られているのは、その「実態」だと思います。
残念ながら、今のところ自民党も野党も「失格」でしょう。
ただ、まだ「答え」が出たわけじゃない。
ここからが「本当の存在意義を問われる」時だと思います。