・上級国民/下級国民
著者:橘玲
出版:小学館新書
「言ってはいけない」「不都合な真実」の橘玲氏が、日本/世界における<分断><格差>について解説した作品。
う〜ん、それほど驚くことはないかなぁ。
「そうだよねぇ」って感じでしたw。
・<団塊の世代>を守るために、「若者」(新卒者)の雇用が割りを食ったのが、「雇用崩壊」
・専業主婦が就業にスライドしたが、その受け皿が「非正規雇用」だった
・日本では「大卒」と「非大卒」では大きな断絶・格差がある
・知織化社会・リベラル化・グローバル化が格差と分断を進めていく
・<思想>よりも<文化><生活習慣><生活スタイル>での分断が進む(そこに経済格差が絡んでもいる)
etc,etc
「不都合な真実」はモテ・非モテのあたりかな。
まあそこは僕は「ネタ」として読みましたがねw。
証明もしようもないし、「だからどう」ともできないですし。
煽りは「上級国民」「下級国民」というレッテルでしょうか。
実際には「上級国民」にレッテルされる人は「国民」としてのアイデンティティはそこまで強くなく、「世界市民」的な意識を持っています。(「愛国心」とは別の話ですよ)
つまり「上級国民」というのでは<事実>ではなく、「下級国民」と自嘲する層からの(屈折した)蔑称でしかありません。
本書は「解説」はしていますが、「方策」はほとんど示してくれません。(<私に妙案があるわけではない>と作者も自認しています)
その作者が思い描く分断の<これから>はこんな感じです。
<私は、2020年にトランプが再選されれば、アメリカの「リバタニア」の住民たちは自分たちの社会に興味を失うのではないかと思っています。「アイデンティティの衝突」につき合っていてもなにひとついいことはないばかりは、不愉快な思いをするだけですから(中略)
そうなれば、リベラルは都市郊外の高級住宅地にひきこもり、インターネットのヴァーチャル空間でグローバルな「リバタニア」とつながり、国境を自由に越えてビジネスしたりバカンスを楽しんだりするようになるでしょう。「ボボズ(リベラル)」たちが現実世界から撤退しはじめるのです。
(中略)もちろん日本も例外ではありません。
これこそが、私たちが体験している「リベラル化する世界の分断」なのです。>
ある種の「デストピア」予想。
でもなんか、「それもしゃ〜ないかなぁ」って思う自分もいるんですよね。どっかに。
なんか「ネトウヨ」や「日本人アイデンティティ主義者」の振る舞いやら、それに振り回される政治や行政なんかを見てると。
まあ、僕は<郊外の高級住宅地>に住んでるわけでも、<国境を自由に越えてビジネスしたりバカンスをたのし楽しんだり>してるわけじゃありませんが。(ハワイには行ったかw。ま、このポジションが僕の悩ましさです)
世界同時株安の気配があって、さて「トランプ再選はあるか?」ですが、だからって<分断>や<格差>がなくなるわけではないでしょう。(それは<知織化社会・リベラル化・グローバル化>の必然であり、それを逆回転させることは<貧困>と<差別>の時代に戻ることを意味します)
そこを踏まえて<包摂>と<再分配>の文化・政策を推進していく必要があるんですが、そこに期待できるかどうかってのが…
作者が希望を持ってるのが、「シンギュラリティ以降のAI」。
「んな、アホな」
と思う一方、そう思わざるをえないほど、この<分断>と<格差>の根は深く、こんがらがってる。
ほんと、「どうせえっちゅうねん」って感じなんですよねぇ。
「それはそれとして、個人として(家族として)の<生き残り戦略>を考えるしかない」
結局はそういうことなのかもしれません。
諦めたくはないんだけど…。