・分断した世界 逆転するグローバリズムの行方
著者:高城剛
出版:集英社ビジネス書(Kindle版)
「高城剛」の見方ってのは、僕にとっては非常に興味深いものがあります。
毎週のメルマガは楽しく読ましてもらってますし、著作もソコソコ読んでます(結構unlimetedで無料で読めるってのもありますが)。
基本的スタンスは、
「眉に唾をつけながら読む」w。
要は「鵜呑みにしない」です。
でも多分、作者が求めるスタンスもそうなんだと思うんですけどね。
本書は、その「高城剛」目線での「世界情勢」のまとめ。
<本書は、前編と後編に分けることにした。
今回の前編は、ミスコミュニケーションによって東西の「壁」が壊れ、世界がひとつになった1989年から、2019年まで。ここで、世界は31年ぶりに「分断」の時代を迎える。
後編は、2020年から2049年まで、現在の世界を見て感じた30年後の世界、おそらく再びひとつになる予測を、僕なりの解釈で書き上げた。
半世紀を超える過去から未来への長旅に、どうか最後までお付き合いいただければ幸いです。>
この「前編」になります。
「ちょっと高いかなぁ」とも思ったんですが(1,620円)、いつも楽しませてもらってるので、今後の「取材費の足しに」と購入しました。
「トランプ大統領」を生み出したアメリカの状況から、移民問題に端を発する「独立問題」に揺れるEUの現場まで、高城氏が自分の「足」と「目」で確認した<事実>をベースにした論が展開されます。
(単なる「極右」や「ポピュリズム」の躍進ではなく、「エリート」と「半エリートのせめぎ合いという側面が指摘されています)
東南アジアに関する論説が少ないのが残念ですが(特に「中国」)、アメリカ・EUを軸にした言及はありますから、現在の世界情勢をカバーしてると言ってもいでしょうね。
正直言うと、もうちょい「陰謀史観」的なものがあるんじゃないかと「期待」wしてたんですが、(若干はあるんですが)そこまで「眉唾」ぽいものはなく、リアリティのある、現状分析の一覧になってるように思います。
インターネットにより「フラットな世界」が実現すると思いきや、「分断された世界」が急速に広がりつつある。
この認識は「遅れてくれて、ありがとう」のフリードマンさんと重なります。
より「事実」の指摘という点では本書の方が的確でもあるでしょう。(情報も新しいですしね)
もっとも「じゃあ、どうすべきか」は本書にはありません。それは「後編をお楽しみに」ってトコかなw。
<中国がシリコンバレーの侵略を防ぎ、独自サービスを定着させて国家のサイバースペースを守ったように、EUは、同じようにシリコンバレーの侵略から、域内のサイバースペースを守ろうとしているのが、うかがえる。世界をつなげたインターネットは、ついに「分断」の時代を迎えるのだ。
また、GDPRは、欧州内のインターネット(の道徳や社会)を、GoogleやFacebookがまだ登場していなかった1995年まで戻すと明言している。
端的に言えば、インターネット上における欧州の外堀に「壁」を建て、データを一切持ち出せないようにし、行き過ぎたインターネットを再構築する(時計の針を戻す)法律なのである。
ベルリンの壁が崩壊してから、まもなく30年。いま、ドイツ発欧州のサイバー空間に、「新しい壁」が建とうとしている。>
まあ日本は実質上「海」と「言語」で世界とは「分断」されてるようなところはありますw。
なんで、EUのこの流れがどこまで影響するかは「?」。
ただその中で
「じゃあ、(今の中国に見られるような)チャレンジングな動きがビジネスにでも文化にでも出てくるか」
と言われると、ちょっと自信がないかなぁ。
そうなるとブロック化された世界の中で、それぞれが独自性を持って成長していくのに取り残されるだけ…なのかも。
米朝首脳会談の動向は不透明になってますが、「分断」が進むとしたら、東南アジアでのメインプレイヤーは間違いなく「中国」だし、そことの距離感は周辺諸国は意識せざるを得ないところ。
今後の日本はどうなるのか/どうあるべきなのか。
高城氏の「妄想」が炸裂するであろうw「後編」が楽しみです。