鈴麻呂日記

50代サラリーマンのつぶやき

若いもんは何考えてるかなぁと思って:読書録「日本再興戦略」

・日本再興戦略

著者:落合陽一

出版:幻冬舎(Kindle版)

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これからの日本社会の方向性について、若い人がどんなこと考えてるのかなぁと思って購入してみた本です。

作者は最近の若者の中では結構尖ってる方でいろんなところに顔出している「落合陽一」氏。

個人的には落合信彦氏の息子さんて言う方での意識づけがされてますが。落合信彦さんっぽい大風呂敷を期待して…と言う点もなきにしもあらずですw。

 

作者の作品は何冊か読んでるんですが、結構独特の話法を持っていて、「どういうこと?」ってのも少なくないんですけど、本書については専門のテクノロジー関係以外のところについても論じていることもあってか、結構分かりやすい内容になっています。

まぁ、幅広すぎて、まとまりに欠けるって言う感じもしなくもないですけどねw。

 

第1章と第2章で欧米と日本との比較を行っていて、西洋的な思想から東洋的な思想への変換の必要性を説いています。

日本の歴史を踏まえながら、日本社会においては中央集権的な組織は向かないのだと言う認識のもとに、非中央集権的な組織への回帰を訴えるとともに、拝金主義やトレンディードラマ的世界観など、現代日本における悪癖なども指摘されています。

 

幅広く論じられている本ではありますが、1つのポイントはこの「非中央集権的組織」にあると言えるのかもしれません。

本書においては行政組織としては「地方分権」が定義されていますし、「近代的個人」よりも「複数のコミュニティに属する存在」が重視されます。

それらを支える経済的な仕組みとしてはブロックチェーンに支えられたトークンエコノミーが強く推奨されています。

テクノロジーに支えられることによって、中央集権的な組織形態から、コミュニティの集合体としての国家や組織に移行していく事を、落合さんは考えているかもしれません。

それを概念的に論じるだけではなくて、自ら実践するために大学を退職し、改めて大学内に研究所設立し、独立採算で経営する立場に立つ…なんて言うのはなかなか思い切ったことをやるなと言う感じ。自らコミュニティを作り上げて、それを日本最高戦略の核にしようと言う気宇は、落合信彦を超える大風呂敷のようにも見えますw。

 

まぁ、そんなにうまくいくかどうかは何とも言えませんけどね。実際、基盤となる仮想通貨・トークンエコノミーについては、昨今いろいろなトラブルも起きているところです。

トラブルの内容自体はテクノロジー的な側面と言うよりは、運営の問題のようですが、作者自身が指摘するように仮想通貨 に投機的な資金が流れ込んでいて、決済機能を確立する前に投機対象としボラティリティが高まっていることは問題でしょう。

どういう形にせよ、分権的組織や、コミュニティが今後重要視されるっていうのは僕も賛成なんですけど、その組織の経済的基盤っていうのは確かに考えなきゃいけません。

「トークンエコノミー」っていうのは確かにいいアイディアだと思うんですけど、現在起きている投機的な動きは、その設立の芽を潰してしまうかもしれません。本当に必要なのは、そのコミュニティ内での決済機能なんですから。

(それが投資金融機関の謀略かどうかは分かりませんが。ここら辺、ちょっと落合信彦的w)

 

本社の後半では今後の企業や仕事何かがあり方についても論じられています。

僕なんかは「ホワイトカラーおじさん」の典型的一員なんでしょうねぇ。

今後の社会のあり方を考えると、「ホワイトカラーおじさん」の居場所はなかなかないようです。当面は、ベンチャー企業等に出向して、クリエイティビティの高い人たちが苦手とする事務的な業務を担う存在となる…と言うのが「ホワイトカラーおじさんの生かし方」だとか。

…そこまで事務業務が得意じゃない場合はどうすればいいのやら…。

 

当たり前ですが、作者はテクノロジに対してはかなり前向きな意見を持っています。

自動運転、自動翻訳、5G、ロボット…こういうテクノロジーが活用される社会像は、僕としては結構ワクワク感があって好きなんですけどね。

これからの日本の人口減少・少子高齢化をマイナス要因として捉えるのではなくてチャンスとして捉え、テクノロジーを使った機械と人間の融合を積極的に進め、世界に先んじて先進的社会を築き上げる。

「日本再興戦略」を一言で言えばこうでしょう。

 

<ポジションを取れ。批評家になるな。フェアに向き合え。手を動かせ。金を稼げ。画一的な基準を持つな。複雑なものや時間をかけないと成し得ないこと自分なりの価値観を見出して愛でろ。あらゆることにトキメキながら、あらゆるものに絶望して期待せずに生きろ。明日と明後日で考える基準を変え続けろ>

 

さ〜て、「ホワイトカラーおじさん」のポジショニングはどうあるべきか…。