・ニッポン2021-2050 データから構想を生み出す教養と思考法
著者:落合陽一、猪瀬直樹
出版:角川書店
若手ビジョナリスト落合陽一と、政治・実務経験もある作家・猪瀬直樹の共著。
対談集かなぁ思ってたんですが、テーマを決めて、それぞれは自分の思うところを論じる…というスタイルでした。
どっちかというとメインは落合さんで、猪瀬さんがそこに補助線を引く…って感じかな。このバランスはなかなか良かったと思います。
一言で言えば「近代の超克」。
もう少し踏み込むと、
「明治以降の日本の柱となっている官僚制度・主義に支えられた統治構造を、テクノロジーをキーとして、新しい時代に向けて変革していく」
って感じでしょうか。
この「テクノロジーをキーにして」ってところから「ポリテックス」という考え方が出てきます。
<ポリテックス=政治の課題をテクノロジーで解決する。テクノロジーの課題を政治的に解決する。そして政治とテクノロジーがそれぞれ変わっていく>
これ、落合さんと小泉進次郎氏が話す中から出てきたようですが、なかなかいいビジョンじゃないかと思います。
もっとも小泉進次郎氏が早速ぶちあげたものの、今のとこと「形」になってるのはタブレットによるペーパーレス化くらいのようですが…。
いやまあ、悪くはないんですが、ビジョンの割にショボい感じがするし、何よりスピード感がなさすぎ。
一歩一歩…かもしれませんが、それにしてもねぇ…。
そういう意味じゃ本書も、方向性としては面白いものが打ち出せてるものの、具体性やイメージという点ではもう一つかもしれません。
道路公団改革なんかやった猪瀬さんならもっと具体的で現実的なとこにまでも踏み込めると思うんですが、それは自分の役割じゃない…ってとこでしょうか(まあ、政治的には失敗してるし、テクノロジーにそこまで詳しくはないでしょう)。
オリンピック、(もしかしたら)万博…とある中で、具体的な「日本のビジョン」を示すことが求められることになると思いますが、今のままじゃどうだろ?って気がしてます。
今やテクノロジーによる未来社会って、日本よりは中国でしょうからねぇ…。
ここを打破するためにも小泉進次郎さんや落合さんには頑張って欲しいと期待しています。
<進次郎さんと以前、話したときに「僕には父における竹中平蔵さん(中略)や猪瀬先生のような存在がまだいない」と語っていたことがあります。30代のしがらみが少ない時期に、目的に合わないおかしなルールを改正し、提言を重ねて、結果を積み上げていく。良いブレーンとともに、新しい日本を作り上げていくことを大いに期待しています。>(猪瀬氏)
「『平成のうちに』衆議院改革実現会議」なんかはそういうとこも意識して、かな?
その姿勢はよし。
あとはスピード感。
時間なんてあっと過ぎ去っちゃうし、テクノロジーの変化のスピードは国会の審議のスピードなんかとは比べ物になりませんからねぇ。
「ポリテックス」
いいじゃないですか。
ぜひ、もっと良いブレーンを身の回りに見つけて、テクノロジーの変化のスピードで社会を変えていって欲しいと僕も期待しています。
…って、なんか小泉進次郎に向けた感想みたいになっちゃったなw。
まあ「政治」の方は彼に期待するとしてw、それを支えるブレーン、その目付け役として、落合氏、猪瀬氏には頑張って欲しいですね。
そう言う期待を感じさせる一冊…ということです。