・小沢一郎の権力論
著者:小塚かおる
出版:朝日新書
僕は結構昔から小沢ファンだったんですけど、正直言うと民主党政権が崩壊した位のタイミングで小沢さんは引退したほうが良かったんじゃないかと思っていました。
今でも、その考えは変わってません。
小沢さんが現役の政治家である以上、小沢さんの言う事はどうしても権力闘争と絡めて考えられちゃいますからね。
どんなに正しいことを言っても「裏」があるように取られます。まぁ、それだけの実績も積んでますからw。
まぁでも政治家として、もう一度政権交代を行い、日本に二大政党制を根付かせ、民主主義を実現する態勢を作り上げると言うのが小沢さんの信念なんでしょう。
僕は小沢さんのように実力もあり、貴重な経験を積んだ人が、一歩引いたところから、正論を語っていく方が結果としては日本の政治を良い方向に変えていくんじゃないかと思うんですけれども、それはもう人それぞれが考えること。
小沢さんはそういう道を選ばなかったと言うことです。
本書は小沢さんが日刊ゲンダイの記者に語ったものをまとめた作品です。
言ってる事は相変わらず、政権交代を実現するためには、野党が連合するしかないんだと言う点は昔から言い続けていることでもあります。
僕もこの点は同感で、「野合」とか言われるのは確かですが、それを言ってても、国家を動かす立場に立てないのであれば何の意味もありません。
「国家動かす」と言うことが「権力を握る」と言う事ですから、権力を握るためにあらゆる手段を講じる事は絶対に必要なことだと思います。
とは言え、その向こう側に「何らかの政治理念」が必要なことも確かでしょう。
小沢さんにはそれがある。だから野合と言われても権力を掌握するために策を講じる。それは、自分が持つ政治理念を実現するためであるし、そのことによって日本が良くなっていくと言う信念があるからでしょう。
問題は、あらゆる政治家がそういう理念を持っていると言えるのかどうかって言うことでしょうね。
どうもそこのところが信頼しきれない。だからこそ烏合の衆の集合のような野党連合に対して、国民は不安を持っているというのが現状じゃないでしょうか。
枝野さんは、当面は立憲民主党で独立してやっていくつもりなんでしょうか。
経緯から言ったらそれも当分は仕方ないかもしれません。
でも本当に自民党政権を倒し、自らが考える理念を実現するつもりがあるのであれば、いずれは野党連合のことを考えなければならないでしょう。
さて、その時小沢さんの出番があるかどうか。これは何とも言えませんね。
本書で言えば、憲法や安全保障に対する考え方は、個人的にはやはり小沢さんの考えに僕は近いと思います。
現実的選択肢として国連主義を取ると言うのは、現場の憲法の延長線上では妥当なラインじゃないかと思うんですけどね。そういう方向性での改憲であれば、比較的国民合意も取りやすいように思うんですが、甘いかな?
経済政策については、ちょっと安倍政権に厳しすぎるように思います。
まぁ、経済政策に限らず安倍政権に対しては相当厳しいスタンスなんですが、そのことがなんとなく愚痴っぽく聞こえちゃうっていうのが本書のマイナスポイントかもw。
現役の政治家で、与党を倒そうとしてるんだから、それはもちろん当然のスタンスなんですが、地域分権や雇用政策なんかは、安倍政権もそこそこ打ち出してる分野ですからね。
個人的にはそれを進めていくところに規制緩和や既得権益打破が必要だと思っているし、そのスピード感が遅いところが安倍政権の最大のマイナス点だと思ってるんですが、ここら辺を語る小沢さんの口調は、ちょっと辛口すぎるような気がするし、オールドタイプの政治家っぽくもあるか、と。
まぁ、そこに僕の色眼鏡があるのかもしれませんがw。
小沢一郎の政治理念を聞くだけではなく、彼が自民党時代から今までたどってきた政治生活を振り返り、「権力」について論じている本として、なかなか面白いと思います。
これだけの経験をしてきた政治家っていうのは、今の日本にはいませんからね。
できればそれを、現役政治家の言葉としてではなく、色眼鏡なく、フラットに聞きたかった。
野党連合による政権奪取や、安全保障の話なんかには、
「どうしてこれが他の政治家や国民に分かってもらえないのかなあ」
… て言う愚痴も垣間見えます。そこら辺の恨み節は、愚痴と思うとちょっと寂しいですが、言ってる事は実に筋が通ってると僕は思うんですよ。
現役の政治家じゃなければ、それは「愚痴」じゃなくて、「主張」「論説」になるんだけどなぁ。
これは僕の「ないものねだり」ですがw。