・歴史検証 なぜ日本の野党はダメなのか? 「自民党一強」を支える構造
著者:倉山満 ナレーター:菅沢公平
出版:光文社新書(audible版)
audibleで題名を見て、「面白そう」と思って聴き始めたんですが、聴いてるうちに「?」な感じに。
なんか書きっぷりがチョット厳しいというか、感情的というか、品がないというか…。
で、作者名を確認したら、「倉山塾」の倉山満さんだったわけですw。
納得。
…だけど、聴いてみると、かなり面白いし、日本の近・現代政治史を振り返る上において、非常にタメにもなりました。
「社会党」のコキ下ろしっぷりは、もうちょっと抑えてもいいと思うけどw。
(主旨的には倉山さんに賛同はするんですが、それにしても言葉が激しすぎて、なんか冷静な話に聞こえないんですよね)
作品としては
明治維新から、戦前の政党政治の流れ、戦後のGHQ政策、革新政党の伸長、55年体制の成立、自民/社会の馴れ合い時代、日本新党政権、自社連立政権、民主党政権、安倍政権
…と、政党政治の流れを見て、その流れの中から「憲政の常道」をあるべき姿として見出しつつ、戦後の保守/革新の二大政党<もどき>に対して強い批判を加えています。
まあ、「憲政の常道」って何よ?って話でもあるんですが、論旨を踏まえて簡略化すると、
「保守2大政党による政権交代が可能となる政治態勢」
ってとこでしょうか?(選挙後の交代か、交代後の選挙か…と色々あるけど)
それが戦前に成立しつつあった(短期間ではあれ成立した)にもかかわらず、政党自らそれを放棄したところに戦前の悲劇があり、戦後のGHQ(というか民生局グループ)によって、「保守二大政党」ではなく「保守/革新二大政党」が形作られたところに、現代に至るまでの日本政治の混迷の一端がある。
…って感じかな?
その流れで作者は日本新党、民主党、希望の党のアクションに対しては一定の評価を与えています。(その分、小沢一郎とか小池百合子には相当きついんだけど)
僕自身、自民党の一党支配にはマイナス点が多くなりすぎていると考えていますし、その意味で「政権交代」はありうべし…と思っています。
思ってはいるものの、「じゃあ、自民党に代わる政党は?」となると「…」。
その「…」が、「自民党に対抗しうる保守党が成立しない」というところにあるんですよね。
その契機は何度かあったけど、その度に「左派」の巻き返しがあって、「保守」色が「革新」色に置き換わっていき、結局のところその「革新政党」は政権交代は程遠い、自民党の補完勢力としての「野党」に成り下がる。
「民主党」から「立憲民主党」への流れなんか、マンマそのままです。
(それが分かっていたはずの小沢一郎が、自分への過信だか、なんだかで、その後押しをしてしまうというのが、また何とも…)
国家観の基本的なところでは差異がなく、政権が後退したとしても、官僚統治・外交方針の安定性は保たれながらも、イシューとする政策において闘い、その政策実現・運営に失敗した場合は政権を交代する。
…保守二大政党による政権交代というのは、こういうものでしょう。(国家間の基本的なところ…ってのは、今だと「民主主義国家」「資本主義国家」「自由主義陣営」「天皇制」「自衛隊合憲」あたりかな。「改憲」は微妙なライン。でも「護憲」は外れると思います)
政権交代した途端に、全部がひっくり返るようじゃ、国家運営なんか成立しません。
(その意味で、ありうべき「リベラル」ってのは根本的な<保守>の概念を持ちつつも、未来への変化を追求する…というものであって、社会の根幹から変革してしまうようなものじゃないんだと僕は考えています)
そこらへんのことを、戦前から戦後、現代に至る日本政党政治史として眺めるのに、本書はふさわしい作品になってます。
ちょっと言葉が汚いけどw。
本書は22年1月に書かれているので、ラストには泉体制となった立憲民主党への期待が寄せられています。
それが参院選を過ぎ、今ではどうなんでしょうね?
ちょっと見かけた記事だと、左派を切り捨てれない泉体制への失望を表明しているようですが…。
難しいね、ここら辺。
融通無碍な自民党のヌエっぷりを考えると、「保守二大政党」ってのが成立しうるのかってのもあるし。(風向きが怪しくなったら、相手の政策とかパクッと丸呑みしちゃうんでw)
だからこそ「自民を分裂させる」って初期の小沢戦略は正しかったんだけど、それも底が割れちゃってますしねぇ…。
「維新に期待」?
う〜ん…。
旧統一教会騒動は、転ぶ方向によっては「きっかけ」ともなりうる<かも>ですがねぇ。
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