鈴麻呂日記

50代サラリーマンのつぶやき

菅政権のコロナ対策への不安感の裏付けとなるような作品:読書録「菅義偉とメディア」

・菅義偉とメディア

著者:秋山信一

出版:毎日新聞出版

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菅内閣が発足して、「菅義偉」本は色々出てますが、特に読む気にはならず…。

本書もその一冊かと思ってたんですが、この記事を読んで、読んでみる気になりました。

「菅義偉」を書く一方で、「政治部」のあり方にも問題提起したってとこが「面白そう」と思いまして。

 

<『菅義偉とメディア』著者は元・菅官房長官番の現役記者 中にいて見えた政治取材の問題>
https://news.yahoo.co.jp/articles/cfcc196fb9b51936845d1c958c75b448643991d6

 


読み終えて、

「まあ、そう言うとこもあるけど、『菅義偉』本ではあるな」

って感想ではありますがw。

でも面白かったですよ。

今の菅政権の新型コロナ対策への不安感(それ自体は安倍政権から継続してますが)がどこから来るのか、その一端が理解できるような内容だと思います。

 


本書が論じている内容を僕なりに整理すると、こんな感じでしょうか。

 


①「菅義偉」のひととなりと政治家としての力量

長官番として見てきた作者の「菅義偉」評は、以下の一文に集約されていると思います。

 


<では「首相にふさわしい人ですか」と問われると、そうは思わない。約 1年間接してみて、リーダーとして国を引っ張る力、国民に語りかける力、未来の社会像を描く力があるとは感じなかった。

 特に「伝える力」の欠如は首相になったからといって改善されるとは思わない。日本学術会議を巡る問題でも、会員任命拒否の是非はさておき、多くの人が「説明が足りない」と思っているはずだ。もっと真摯に、言葉を尽くして、説明する姿勢が求められているのに、菅自身が積極的に向き合おうとしているようには見えない。

 政策面では外交に不安があるが、これは周囲のサポートや政府内の役割分担である程度は補えると思う。むしろ、代えが利かない「リーダーの言葉」の方が問題は深刻だろう。>

 


この「説明力不足」ってのは、総理就任以前から記者の間では明らかだったらしく、ここら辺が長官時代にクローズアップされなかったところにはメディアの問題点が指摘されています。

「権力」の使用の仕方における「危うさ」も重要な指摘。

周囲の意見は聞くものの、その「周囲」のチョイスに…ってあたりは、コロナ対策の初期にも強く感じられました。

 


②望月衣塑子記者との軋轢から見る「番記者」「記者会見」のあり方

vs菅官房長官で名を馳せた望月記者ですが、作者は記者としての力量は評価しつつ、かなりの部分、望月記者の「誤認」を指摘します。

菅官房長官(当時)の方も、「望月記者嫌い」は確かなもののw、あくまでもルール内での対応であったと。

ただこの「ルール」がどうだったのかと言う点はあって、そこら辺は作者の「政治部」への問題提起につながります。

 


③日本のメディア、特に「政治部」のあり方への問題提起

一言で言えば、「記者個人の考えでの取材・記事執筆ができない」と言うところでしょうか。

そこには新聞社・テレビ等の「組織」の論理が絡んできて、結果的にそのことが政権批判の矛を鈍らせてしまうこともある。

まあ、とにかく「時代遅れ」になってることは確かのようです。

新型コロナに関する記者会見でも、自治体や専門家委員会への記者の質問の方が鋭くて、首相への質問には「ん?」ってのが少なくなかったです。

そこら辺の背景も透けて見えます。

 


菅さんに関して言えば、「理想を語るリーダーではなく、リーダーを支えて実務を着実にこなしていくNo.2の実務家タイプ」ってのが実際のところのようです。

本書では菅さんが

長官として絶好調だった時期、

菅原・河井のスキャンダルで力を失って以降、「菅外し」にあった時期、

安倍さんが新型コロナ対策をうまく回せず、相対的に復権した時期、

そして安倍氏の後継として首相となった時期

と描かれ、「菅義偉」と言う政治家の横顔が理解できるスタイルとなっています。

 


僕自身としては、

「悪くないんじゃないかな」

とは感じるんですけどね。

コロナ禍で明らかになったのは「理念」を振り回すよりも、統治をしっかりやって、「実務」をキッチリ回せるような仕組みを築くことの重要性…ですから。(実際、そう言うところは地味ながらも着実にやってる感もあります)

ただまあ、「今現在」においては「メッセージ性」が必要なことは確か。

そこんところは決定的に菅さんは「×」のようです。

 


まあ、いろんなことがこの「コロナ禍」で露わになってきてるのは確か。

その背景の一端が本書にも描かれています。

「必読」

とは思いませんが、僕としては興味深く読んだ一冊ではありました。

 


今後については「実務家としての菅さんに期待」かな?

野党の方は決定的に「実務家」としての能力に欠けるようにしか見えませんからねぇ…。

 


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