鈴麻呂日記

50代サラリーマンのつぶやき

参考になりました:読書録「AI時代の勝者と敗者」

・AI時代の勝者と敗者 機械に奪われる仕事、生き残る仕事
著者:トーマス・H・ダベンボート、ジュリア・カービー 訳:山田美明
出版:日経BP

AI時代の勝者と敗者

AI時代の勝者と敗者


人工知能(AI)」がどういうものかについてはアレコレ色々読んできてるんですが、具体的に「仕事」にどういう影響を与えるのか?「機械に仕事が奪われる」という論調もあるし、劇的な主張(9割ってのも読んだことがあります)も見かけるけど、どんなものなのか?
…若干「仕事」がらみの興味もあって、本書を読んでみました。


本書のスタンスは、
「確かに『仕事』の多くがAIの影響を受けるが、『取って代わられる』(自動化される)よりも、人間の能力をAIが『拡張』することで、『仕事』の可能性が大きく広がる」
って感じ。
僕自身、「AI」については「協業」の可能性を強く認識していますが(「取って代わられる」まで「AI」が進化するには相当の時間がかかるとも思っています)、結構それに重なる考え方が論じられていて、非常に興味深く、参考になりました。


ステップ・アップ 自動システムの上をいく仕事
ステップ・アサイド 機械にできない仕事
ステップ・イン ビジネスと技術をつなぐ仕事
ステップ・ナロウリー 自動化されない専門的な仕事
ステップ・フォワード 新システムを生み出す仕事


それぞれについて、「将来」を想像で語るのではなく、「現在そういう仕事をしている人」を具体的に紹介することで、その「可能性」をリアルに見せてくれます。
すごく納得感がありましたよ。


ただしこの「未来像」は「自然にそうなる」のではなく、「目的」的意識を各層(政府、企業、団体、個人)が持って取り組むことによって実現する姿。
場合によっては単なる「自動化」の流れが大きくなり、「機械に仕事が奪われる」未来がやってくるかもしれません。そこは本当に「裏表」の未来図なんですよね。
また「格差」の問題もそこにはあります。
「資本」による「格差」ももちろんあるんですが、「行動する力」「考える力」「変わる力」を「持つ者」と「持たない者」の間にも「格差」は生まれるでしょう。この是正はかなり難しいように思います。(税金とかの「格差是正政策」ではカバー仕切れないでしょう、こういうのは)
そういう観点からは、やっぱり「AI」がもたらすモノは大きいし、「働く者」にとっては厳しい側面も少なくないと思いますね。(ここら辺が今、考えてることにも繋がるかな)



本書では「自動化」が進んでいる業界として「損害保険業界」の事例がかなり取り上げられています。
商品性が相当日米では違うので同じような風には行かないんですが、根本的なところで「自動化」にマッチしやすところがあんだろうなとは思いましたね。
一方でだからこそ「拡張」の可能性も必要性も見えてくるものがあります。


<企業の場合、拡張戦略は、変化が早く競争の厳しいビジネスの世界を生き抜くために必要な、持続的な革新や柔軟性を確保する手段となる。深く根づいた人間的スキルが、力強い機械の分析によって十分に支えられた時に初めて、人間の顧客の心に響く解決策を提供できる。>


「解説」にライバル会社wの「損保ジャパン日本興亜」の事例が出てきてますが、そういう視点での取り組みをしていく必要性があるという認識は業界としてあるってことでしょうね。
(ただ日本のジェネラリスト的人材教育に優位性を見出すのは「?」でもありますが。前提となる「暗黙のルール」が多すぎますからね、日本の社会も企業も)


<私たち自身が優秀なものに仕立て上げた機械と新たなプラスの関係を築けるかどうかは、私たち次第である(一人ひとりという意味でも組織という意味でも)。人間と機械の力を組み合わせれば、それぞれの職場もこの世界も、かつてないほど過ごしやすい場所にできるのだ。>


「未来は『予測』するものではなく、『つくる』もの」
そうありたいものですし、そこに向けた「目的意識」の醸成が重要なんだと思います。
…難しいんだけどね、これが。