鈴麻呂日記

50代サラリーマンのつぶやき

スパイク・リーが怒るのもわからんでもない:映画評「グリーンブック」

アカデミー賞を受賞したときに、スパイク・リー等からの批判の声が上がり、変な話題になった作品。

個人的にも公開時に見に行こうと思ったら、妻が「ブラック・クランズマンの方が面白そう」と言うので、見損ねた経緯があります。

(「ブラック・クランズマン」は面白かったですよ)

 

<映画評「ブラック・クランズマン」>

http://aso4045.hatenablog.com/entry/2019/03/31/183613

 

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グリーンブック

 

まあ、スパイク・リーの気持ちも分からんでもないかなw。

映画としてはウェルメイドで感動的な出来なんですけどね。観終わった後にスゴくいい気分になれる。

ただまあ、オールドスタイルといえば、オールドスタイル。


舞台となる「1962年」と言えば、ブラックミュージックとしてはハードバップが全盛だし、(作中に出てくるように)ブルース・ロック・ソウルの力強い流れにも黒人たちの影響は強く出ている時代。

それに対して、主人公のドク・リーが演奏するのは「クラシックをベースとしたポップ系の音楽」。

本人は「クラシック」を弾きたかったし、それが出来なかったところに「人種差別」の影響はあるんだけど、力強い黒人音楽の隆盛(そこには怒りや絶望や悲しみも背景になっている)と切り離されたようなバックグラウンドは、ちょっと「ヌルい」感じにつながってるようにも思います。

「史実」がそうだったんだから、それをどうこう言っても仕方ないんだけどw。

(ラストのバーでのセッションシーンには、主人公がそう言う「音楽」の枠から飛び出す爽快さがありますけどね)


ただ製作者たちが目指したのは「人種差別」だけの問題じゃないんですよね。

出自や経歴から(上記のような)黒人文化と切り離された上に、ゲイであるために二重にマイノリティとしての意識を強く持たざるを得ず、「孤高」の存在となっているドク・リーと、粗野で単純な差別意識をもながらも、本質的には「良き人」であるトニー・リップが出会い、互いに影響し合うことで、お互いの「枠」を乗り越えて「友人」となる。

そういう話を描きたかったんだと思います。

それは十分に伝わってくるし、心を揺るがすものがある作品だと僕は感じました。

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…なんだけど、

「それじゃあ、ダメなんだ」

ってスパイク・リーの主張も十分理解できるんですけどね。

そう言う意味じゃ、ちょっと難しいタイミングに作られた作品かな、と思わなくもないかな。