鈴麻呂日記

50代サラリーマンのつぶやき

良い話だし、考えさせられもしました。:読書録「スピノザの診察室」

・スピノザの診察室
著者:夏川草介 ナレーター:吉野貴大
出版:水鈴社(audible版)

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京都の民間病院で内科医をしている雄町哲郎を主人公にした物語。
大学で内視鏡手術のプロとして卓越した手腕を持ち、将来も直望されていた哲朗だが、妹が癌で死に死んだことをきっかけにひとり残された甥を育てるために大学病院を退職。
民間病院に移っている。
その中で、終末医療に関わることで、哲郎は自分自身の考えを深めて行く。
ある日、大学時代の先輩・花垣の紹介で、若い医師・南が哲郎の元に研修に訪れることになる…

 

 

この主人公のキャラクターが秀逸です。
先進医療のトップから民間の医療現場に移ってきているわけですが、先進医療に対して批判的なわけでも民間医療の現状に不満があるわけでもなく、それぞれの重要性や意義を認めながら、その現実の中で自分自身の思索を深めていく。
この思索を深めるって言うあたりがいいんですよね。
「スピノザ」が出てくるあたりもそういう意味です。
物語的には終盤にブラックジャック張りの劇的展開があるんですけど、そこが作品のテーマと言うわけではないでしょう。
いや、スッキリするじゃすっきりするんですけどw。

 

 

京都の風景屋敷が細やかに描かれる中で、いろいろな人々の最後の日々が過ぎていきます。
僕にも80歳を超える母がいますし、僕自身ももう60になろうとしていますからね。
呼びながら思うところはそれなりにありました。

 

 

作者は「神様のカルテ」と言うシリーズで有名な方のようです
僕は読んだことないんですけど、読んでみてもいいかなぁ。
それよりもこの作品の続編を期待したいところではありますが。