鈴麻呂日記

50代サラリーマンのつぶやき

本格推理短編小説。好きな人は好きでしょうね。(僕は好きです):読書録「可燃物」

・可燃物

著者:米澤穂信

出版:文藝春秋

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<彼らは葛をよい上司だとは思っていないが、葛の操作能力を疑う者は、1人もいない。>

 


「葛(クズ)だからな〜。フロスト警部みたいな人格的に欠陥のある、いい加減な刑事なんかな〜」

とか思いながら読み出したんですが、全然そんなことはない。

主人公の「葛警部」は極めて優秀な刑事。

優秀過ぎて、部下に任さず、自分で事件を片付けてしまうので、

「部下の育成能力があるのか?」

と上司から疑念を持たれるくらい。

疑念は持たれるんだけど、あまりにも優秀なんで事件から外すこともできない、と。

 


…と言うわけなので、フロストみたいに人間的にグダグダなところが描かれて、それを楽しむ…と言う話ではありません。

物語は「事件発生」から「解決」まで一直線。

捜査も極めてオーソドックスで、リアリティがあるものです。

その過程で、「どこか引っかかる」と言うところを葛が見つけ、その引っ掛かりが解けることで事件の真相が見える…と言う内容です。

 


崖の下(凶器探し)

ねむけ(目撃証言の真偽)

命の恩(死体を解体した理由)

可燃物(放火の動機)

本物か(人質事件の真相)

 


収められているのは5つの短編で、葛の推理は合理的で、物語はどれもシュアにまとまっています。

その分、「遊び」みたいなもんはあんまりないんですがw、まあそう言うのを求める話じゃないのかな、と。

 


「黒後家蜘蛛の会」みたいな本格推理の短編集が好きな人にはピッタリの作品。

「人間が描けてないと…」

って人はご遠慮ください。

 


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