・おいしいごはんが食べられますように
著者:高瀬隼子 ナレーター:椎名ライカ
出版:講談社(audible版)
「芥川賞」受賞作品。
早速audibleになってました。
仕事早いなぁ。
(通常速で4時間強。2倍速で2時間チョットでした)
埼玉にあるソコソコの規模の企業の支店。
それなりの成果を上げている営業社員・二谷
仕事ができる頑張り屋の女性社員・押尾
仕事はできなくて体も弱いが、みんなが守りたくなる女性社員・芦川
30代初めの3人の社員がメイン登場人物。
…というか、メインは二谷と押尾ですね。
章ごとに彼らの視点から物語が語られます。
二谷は三人称、押尾は一人称で。
護られる存在である芦川は仕事ができなくて、そのツケは周りの人間(特に押尾)に回ってくる。
二谷はそう言う芦川に苛立ちを覚えつつも彼女と付き合っている。
押尾は二谷と芦川の関係を知りながらも、二谷に親近感を覚えている。(だからって略奪愛に…って話でもない)
職場が忙しくなってくる中、周りの人に仕事を担ってもらうことの増えた芦川は職場に手作りのお菓子を作ってくるようになり、そのことが関係性を歪ませていく…と言うのが物語の展開です。
まあ、「二谷」が歪なんですよね。
彼は「おいしく食事ができない」。
それは彼自身が職場や自分自身の在り方に不満を覚えているからであり、にもかかわらずそこから出ていくことも、自分を変えることも、職場を変えることもできない。
その象徴が「芦川」に集約されてる感じもあります。
押尾の方は、職場に対して不満を持ちつつも、それなりにうまく合わせる処世術も身につけてるし、自分自身をコントロールすることもできる。
二谷の「歪さ」がある事件で噴出し、押尾はその影響を受けて一歩踏み出さざるを得なくなったんですが、それがなければ押尾はそれなりにこの会社でうまくやって行けただろうと思います。
ただ結果として踏み出した道は、彼女にとってはもっと望ましい生き方につながってはいるのですが。
会社経験がある人だったら、「あるある」じゃないかなぁ。
ここまでの「歪さ」が露わになることは珍しいだろうけど(だから小説になるw)、こう言う職場や、こういう社員の「立ち位置」「関係性」って言うのは珍しい話でもない。
その中でどうやって「自分」の居場所を見つけるのか?
…なんか、ちょっと気分悪くなっちゃうなw。
押尾は自分の道を歩き始め、二谷は「芦川」に、「職場」に、「社会」に取り込まれていく。
でもその先に二谷にとっての「居場所」がないとは言えないだろう、とも。
「おいしいごはん」が食べられるようになるかも…。
…それはまた、別のお話w。
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