・コンビニ人間
著者:村田沙耶香 ナレーター:大久保佳代子
出版:文藝春秋(audible版)
2016年芥川賞受賞作。
評判になったのは知ってたんですが、その中でストーリーに触れてる記事なんかも読んでたので、
「まあ、こんなもんかなぁ」
と思っちゃって、スルーしてました。
川上未映子さんの「夏物語」をaudibleで聴いたのが、なかなか新鮮だったので、見かけたこちらも聴いてみることに。
意識してなかったけど、女性の作家の小説をあまり読んでないな…ってのに気づいたというのもあります。
社会の暗黙のルールのようなものが理解できず、違和感を持っている女性が、「コンビニ」というシステムに依存することで<人間>としての有り様を形作っているのだけど、歳を取るにつれて(主人公は36歳)<綻び>が出てくるようになり、それを解消するためにある男性と同棲をすることになるが…
みたいな話。
この「コンビニ」というシステムによって自己形成される主人公のあり方や、彼女から見た周りの人間の歪さみたいなものが<読みどころ>なんですかね。
主人公は徹底的に感情の在りどころがずれているので(ロボットみたいなものかな?)、淡々とそこら辺が描かれてるところが面白かったりします。
「契約」同棲する後半のパートなんかは「ディストピア版<逃げ恥>」?w
もちろん主人公の有り様はズレまくってるんですが、じゃあ周りの人間が真っ当かというと、忖度を排除した彼女の視点から見ると、そうも見えない。
同級生家族たちとのBBQのシーンとか、読み用によってはチョット気持ち悪くなるくらい。
どちらにも「歪さ」を感じ、自分自身の感覚にも不安感が生じてくる。
…とはいえ、全体としてはコメディとして僕は読みましたけど。ここら辺の匙加減、川上さんの「夏物語」をちょっと連想しました。
2016年の発表だから、それからもう6年。
コンビニも随分と進化していて、店員・バイトスタッフの在り方も結構変わってる気がします。
事務所の近くのコンビニなんか、セルフレジをババーンと導入して、スタッフの仕事や動きも大きく変わったように見えますからね。
それでも主人公のような「コンビニ人間」は、それはそれとして<在り方>を変えつつも存在していけるんじゃないかな。
見方によっては、これほど「システム」に適応した人はいないわけだから。
それがいいことなのかどうか、「いいこと」とかいう話なのかどうか、それは分かんないですけど。
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