・フロン 結婚生活・19の絶対法則
著者:岡田斗司夫
出版:ロケット(Kindle版)
最近のニュースの中で痛ましいのが、ネットを通じて依頼したベビーシッターが預かった子供を死なせてしまった(と考えられる)事件。
事件そのものも痛ましいんだけど、その後の鈴木宗男氏と乙武氏との論争が、更にこの問題の「深さ」を点いていて考えさせられます。
(個人的には「被害者は子供」とのスタンスなので、母親を倫理的に責めることが、子供の救済のための制度設計の足枷として機能してしまう可能性を懸念しているんですがね)
そういう最中に読んだのが本書。例によってAmazonのセールですw。
2001年に書かれた本書は、新しい「家族」「夫婦」のあり方を提示し、なおかつ作者自身がこの論に沿って<フロン的にリコン>していることから、刺激的かつ興味深い作品になっています。(ホントに離婚してるんだもんなぁ)
僕自身としては、
「分かるけど、ここまで徹底は出来ないなぁ・・・」
ってところでしょうか?
「家庭のリーダーは妻に」
っていうのは分かりますが、だからと言って別居やら多夫多妻性やらまでは・・・。(もっとも単身赴任もあり得る日本の大企業には受け入れやすい土壌があるとも言えますが)
ただこのタイミングで読むと、インターネットを中心としたネットワーク社会を重視している点が気になります。
ベビーシッター事件の背景にはそういう面もありますからね。
「2001年の時点で、よくそこまで見通した」
とも言えるし、
「まだまだ過渡期。課題が浮き彫りになってきている」
とも言えるでしょうか。
例えば同じく岡田氏が言っている「評価社会」がもっとネットワークの裏付けとして定着・仕組み化されて来ると、こういうリスクは低減して行くのかもしれません。
「でもやっぱりそこには地域性を組み込む必要がある」とは思いますけどね。
その「地域性」の中に自治体を中心とした行政が含まれることになるというのが漠然とした考えなんですが。(そういう観点からも「地域分権」を進めて行く必要があると思います)
結局、一時期の「インターネット万歳」「インターネットが社会を広げて行く」・・・みたいな「未来論」は修正されつつあるって言うのが現状なんじゃないかと思います(「ネットのバカ」が描いているように)。
その「現実」を正しく評価することは、ヤッパリ必要なんだろうな、とベビーシッター事件などを見てると考えさせられます。
その一方でこういった枠組みが出来る・・・という可能性を否定してしまうということもないとも思いますが。(ネットによる紹介で助かっている人々も沢山いるのは間違いないでしょう)
「地域性」を組み込むことで「評価」のコストを下げる(全国規模の資格制度や規制はコストが高すぎると思うんですよ)・・・あたりが落としどころかなぁとも思ってるんですが、なかなか難しいのも事実ですねぇ。
ちょっと「感想」からズレてますが、「フロン」の興味深さや先見性の斬新さは認めつつも、その背景となるネットワーク社会のあり方に自信が持てない・・・って言うのが本書を四での一番の感想でした。