鈴麻呂日記

50代サラリーマンのつぶやき

「日常ミステリ」はハードルが高い:読書録「珈琲店タレーランの事件簿」

・珈琲店タレーランの事件簿 また会えたなら、あなたの淹れた珈琲を

著者:岡崎琢磨

出版:宝島社文庫

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知念さんが「硝子の塔の殺人」の中で、「日常ミステリ」作品の代表として挙げてたのを見て、購入してみました。

前々からチョット気にはなってもいましたので。

 


「理想のコーヒー」に関する名言を残したフランスの伯爵シャルル=モーリス・ド・タレーラン=ペリゴールの名前を冠した喫茶店。

その店の20代半ばの女性バリスタは、素晴らしいコーヒーを淹れるだけでなく、日常の謎を鮮やかに解き明かす能力を持っていて…

 


という作品。

京都を舞台にして、京都の土地柄と、コーヒーに関する豆知識をスパイスにして、ちょっと風変わりなキャラクターたちと連作ミステリが楽しめます。

 


「日常ミステリ」

日本だと、この分野では「北村薫」が突出した存在だと思っているのですが、ラノベ風のキャラ優先のミステリもこの路線は多いように思います。

本作なんかはその成功作として挙げられるんでしょうけど(シリーズ化してますし)、「日常ミステリ」って、結構ネタが難しいんですよね。

近いところだと「ビブリア古書堂」なんかもありますが、あれは「古本ネタ」で引っ張っています。

本書の場合はチョット「北村薫」風の「日常ネタ」から入って(傘の取り違え)、<連作>の流れから「人間関係ネタ」が中心になって行きます。

そして話は、語り手である主人公とバリスタの<恋愛>模様と、バリスタの過去に絡んできて、最後に主人公の「正体」が…

ってな感じ。

 


どうでしょう?

好きな人は好きなのかなぁ。

ただ僕には「チョット大袈裟じゃないかな?」と思っちゃったんですよね。

いやまあ、「恋愛ネタ」はもうそんなに求めてないってのもあるかも…なんでw。

戯画的なキャラクターの味付けも、正直言って鼻につきました。

 


ただこういうのが「受ける」というのも分からなくもないです。

「僕がターゲットにならない」ってことなんでしょう。

子供たちだったら、特に引っかかりもせずに、スルッと作品世界に入っていけるのかもしれません。

 


しかしまあ、こういうのを読むと、改めて「北村薫」ってすごいなぁと思います。

もっともその北村薫さんでさえ、最近は「文学ネタ」「文学界ネタ」に走りがちなんで、「日常ミステリ」を描き続けるって、結構ハードルが高いんでしょうね。

 

 

 

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