鈴麻呂日記

50代サラリーマンのつぶやき

日本の場合、「ポストフェミニズム」が力を持つほど「フェミニズム」が浸透してないのかも:読書録「フェミニズムはもういらない、と彼女は言うけれど」

・フェミニズムはもういらない、と彼女は言うけれど  ポストフェミニズムと「女らしさ」のゆくえ

著者:高橋幸

出版:晃洋書房

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「フェミニスト離れ」と言う視点から「ポストフェミニズム」について考察した作品。

bar bossaの林さんがnoteで少し取り上げてらっしゃったので読んでみたんですが、思ってた以上に「研究」的な硬い本でした。

エッセイかと思ってたw。

 


まあ、でも読み始めると、意外にスルスルっと読めました。

いわゆる「フェミニスト」に対して、英米では90年代、日本では00年代から出てきた、活動的な「フェミニスト」とは一線を画す、しかし「アンチ・フェミニスト」とまではいかない動きとしての「ポストフェミニズム」について、欧米と日本での流れを考察しています。

(もちろんこんなに綺麗に区分されるものではなくて、「ポストフェミニズム」にも「アンチ」フェミニズム的な部分もあるんですが、本書が主として焦点を当ててるのは、もう少し感覚的な「フェミニスト離れ」の側面だと思います。

いや、勝手な僕の読み込みの可能性も排除しませんが)

 


僕としては、英米の結構<ガチ>な動きなんかも知識整理としては役に立ちましたが、後半の日本の動きの方に、

「はあ〜、なるほど〜」

って感じになりました。

「CanCam」の「めちゃ❤︎モテ」ブームとか、「蛯原友里」周りで何やら起こってるんやな〜とか漠然とは思ってましたが、こういうポジション取りとして整理できるってのは、目から鱗。

もちろん「後知恵」だし、そもそもその整理が正しいのかってのは見方によるのかもしれませんが、「かわいい」の位置付けとか、個人的にはストンと胸に落ちるところありました。

僕自身の嗜好はそちらのタイプじゃなかった…とか言って、どこまで影響されてたんなんか、分かったもんじゃないですけどね。基本、ミーハーなんで。

(一方で「草食系男子」や「ソフレ」の話はピンとこなかったところもあります。ま、世代差もあるかな、ここら辺は)

 

 

 

「ポストフェミニズム」は個人的・感覚的なところに重点を置いていて、社会的制度や政治的立場の改善・改革を強く主張する「フェミニズム」とは一線を画そうとする傾向がある…という見立てを、「性別役割」と「性的魅力」から見た<女らしさ>の位置付けから分析するというのはナカナカ興味深いです。

<自分らしくある>っていうのも、ある意味「性的魅力」に共通の土壌がありますからね。

その「性的魅力」を追求する向こう側に、社会的制度や政治的構図から「性別役割」の罠に陥るリスクを見る…という「フェミニズム」的な危惧もわかるような気がします。

 


日本の場合、「フェミニズム」の社会的影響力が英米ほど強烈じゃなかった分、「ポストフェミニズム」のバックラッシュの動きも表面的には強烈じゃなかったのかもしれません。(当事者はそんなこと言ってられないでしょうが)

その分、英米で露わになり、改善・改革されてきた「男女格差」「マイノリティー差別」の社会的・政治的な成果も不十分なままであるのかなと感じています。

今、ここにきて、そこらへんを変えていこうという動きがようやく出てきてるようにも思うんですがね。(そもそも周回遅れではあるにせよ)

 


そういう意味じゃ、本書で「#MeToo」の動きに触れられてないのは、ちょっと不思議でした。

あれって、「フェミニズム」的な動きだけど、個人的感覚や体験をベースにしてるあたり、「ポストフェミニズム」にも通じるところがある(だからこそ大きなウネリになった)と、個人的には考えたりするんですけど、違うんですかね。

日本で盛り上がりの中途半端さ辺りに、そういう構図を当てはめたりしながら読んだんですけど…。(違うかな?w)

 


僕個人としては、娘を持つ身として、「女性」を巡る社会的・政治的環境は変わってくべきだと思っていますし、そういう観点から日本の今の「流れ」には関心を持っています。

一方で、大した成果も出てない中ながらも、局地的に強いバックラッシュ的な動きが出ていることも気になっていて、そこらへんどうなるのかな〜とも懸念を感じているところではあります。

 


ただまあ、「世代交代」が結局はここら辺を変えていくのかもしれません。

なんか衆院選の結果を見て、なんとなくそんなことを感じました。

となると「ポストフェミニズム」的なスタンスを、どうやって社会的・政治的な改革につなげていくのか…ってのがポイントになるんですかね。

拳振り上げて主張するんじゃなくて。

ここんところが次に知りたいところかなぁ。

 


(しかし書いてても「フェミニズム」も「ポストフェミニズム」も、かなり個人的感覚に沿って定義しちゃってますね。

本書はそこら辺を踏まえた上で書かれていますが、ザクッとした感想を書くのには向かない内容かも。

まあ、あくまで個人としての心覚ということで(と逃げる))

 


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