鈴麻呂日記

50代サラリーマンのつぶやき

ベースにあるのは「経済格差」ですが:読書録「新型格差社会」

・新型格差社会

著者:山田昌弘

出版:朝日新書

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「パラサイト・シングル」や「婚活」といったワードで社会の変化を切り取る山田昌弘さんの近著。

山田さんの論文とかは読んだことないので、そのベースになってるデータや分析がどこまで精緻なものなのかは分からないんですが、「切り口」としてはなかなか象徴的なところをついてくるなぁとは思ってます。

で、今回は「格差」。

確か以前に「希望格差社会」という著作を書かれていたと思うのですが(未読です)、その延長線上で、「コロナ禍」を踏まえ、「格差社会」の有り様と見通しを5つの視点から整理しています。

目次からピックアップすると、以下。

 


・家族格差 戦後型格差の限界

・教育格差 親の格差の再生産

・仕事格差 中流転落の加速化

・地域格差 地域再生産の生命線

・消費格差 時代を反映する鏡

 


それぞれの「格差」については「コロナ禍」の前から存在していたものですが、それが「コロナ禍」で面に強く出てきた…というところでしょうか。

その根本にあるのは「経済格差」(中流が下落し、富裕層と貧困層の格差と分断が広がっている)で、その具体的な「現われ方」について整理してるって見方もできるでしょう。

 


「ええ!そんなことに!!」

みたいな驚きはないんですが、こういう風に整理されると、

「そうなんだよなぁ」

と暗い気持ちにもなります。

 


<平成時代が、「格差は広がっていくのだけれども、それを認めることができなかった時代」とするならば、「令和」は、「格差の存在を認め、それを踏まえた上で新しい形の社会をみんなで作っていく時代になればよい、いや、するべきだと思っています。>

 


<家族の領域では、「戦後型家族」へのこだわりを捨て、さまざまな形の家族を認めてサポートしていくこと、そして、愛情で結びつくカップルを促進する条件を整えること。教育では、新しい時代に必要となった能力(デジタル能力、コミュ力、英語力)を公教育で誰もが身につけられるようにすること。

仕事分野では、現場で広がってきたさまざまな格差を埋める試み。多様な人が速やか、繋がりを作ることができる地域社会の形成。そして、多様な承認欲求の多様な満たし方の推進。>

 


こういう指摘に反対する気はありません。

ないんですが、例えばサンデルが指摘する「教育」を重視するスタンスの中に潜む「自己責任論」の課題や、冨山和彦が提唱する「L型経済」の重視による中間層の引き上げなんかの提議なんかに比べて、やや「表層的」な印象もあるかな?

まあ、もっと幅広い視点で問題定義する作品なので、当然と言えば当然。

「課題認識」をする上で社会を捉えるフレームワークとしては有効とは思います。

 


いずれにせよ、「今読む」タイミングの本だとは思います。

サンデルに比べれば、すぐ読めますしw。

 

 

 

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