・陰謀の日本中世史
著者:呉座勇一
出版:角川新書
マニアックで学術的な内容なのにバカ売れ(47万部)したらしい「応仁の乱」の作者による新作。
<私たちは数々の陰謀論に囲まれて生きている。(中略)陰謀論に引っかからないためにも、何が陰謀で何が陰謀でないかを見極める論理的思考力を身につける必要がある。
そこで本書では、先行研究を押さえつつ、日本中世史における数々の陰謀・謀略を歴史学の手法に則って客観的・実証的に分析していきたい。>
で、取り上げられているのが、
・平安末期の武家の勃興における陰謀
・「平家物語」における陰謀(義経の「悲劇」が1番有名かな)
・源氏将軍家断絶に始まる鎌倉時代の陰謀の数々
・足利尊氏をめぐる陰謀・謀略
・日野美子悪女説を中心とした応仁の乱の陰謀論
・本能寺の変をめぐる陰謀論の数々
・徳川家康と石田三成をめぐる陰謀
<本書で扱う陰謀・謀略の中には、読者にとってなじみの薄いと思われるのも含まれている。>
本能寺の変と関ヶ原の話あたりはメジャーですが、それ以外は結構マニアック。
特に平安時代末期から鎌倉幕府設立あたりまでの陰謀論の数々はかなりの歴史好きな人じゃないとついていけないかも。
少なくとも僕は
「なんか思惑と陰謀が錯綜しまくっとるな〜」
と思うばかりで、知らんことがワンサカでしたw。
でも作品としてはかなり面白かったです。
なんか怪しい「陰謀論」を持ち出さなくても、史実の中にある「陰謀」を追いかけるだけで、十分面白いやんって気分。
まぁ、多分に「陰謀論」の中には、単なる「事実」を論じるだけではなく、主張する人の「主張」や「思想」が含まれてたりするので、それじゃ済まないんでしょうけどね。
でも作者が言う通り、世の中「思った通り」「謀った通り」にモノゴトが簡単に動くもんじゃあない。
そういう現実感から考えると、確かに「陰謀論」は単純すぎるんですよ。因果関係や構図がね。
<そもそも、なぜ「応仁の乱」を先に書いてかと言うと、それまでに発表した一般書(中略)がかなり軽いタッチであり、学会では眉をひそめる向きもあったからである。この二冊に続いて「陰謀」では、売れ筋を狙った軽薄な印象が否めないので、重厚で本格派の(というと聞こえはいいが、要はあまり売れないと推測される)一般一冊挟みたいと言う思惑があった。>
…にもかかわらず、その<あまり売れないと推測され>た「応仁の乱」がバカ売れした作者が、そのことを一番よく分かっているでしょうw。
でも、この本も結構売れるんじゃないかと思いますよ。