・チャーチル・ファクター たった一人で歴史と世界を変える力
著者:ボリス・ジョンソン 訳:石塚雅彦、小林恭子
出版:プレジデント社
- 作者: ボリス・ジョンソン,小林恭子,石塚雅彦
- 出版社/メーカー: プレジデント社
- 発売日: 2016/03/30
- メディア: 単行本
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「チャーチル」はもちろん興味深い歴史上の人物なんですが、まとまった伝記は以前新潮選書か何かで読んだくらいですかね。
まあ近現代史の人物だし、第二次世界大戦の「敵方」の親分の一人だしw、なんかチョット「吉田茂」に似てるし(関係ない?)、膨大な著作を書いてるけど、全然読んだことなし…etc,etc
別に敬遠してたわけじゃないんですが、何となく縁がなくてって感じでしょうか。
ま、ルーズベルトやヒトラー、東條英機の伝記も読んだことはありませんがw。
でまあ、本屋の店頭でチョット目について、深く考えずに購入したのが本書。「プレジデント社」だし、ビジネス書のコーナーに並んでたんで、「自己啓発本の一種かいな」くらいの気持ちもあったんですが、存外(失礼w)まっとうな作品でした。
「伝記」という形ではなくて、「チャーチル」を特徴づける特性(チャーチル・ファクター)を取り上げ、その内容と、それが形作られた背景なんかを論じてるんですが、そもそもの「ファクター」が割とチャーチルの事跡に沿ってピックアップされてるんで、結果的に緩い「編年形式」になってるんですよね。
ま、ガッチリした伝記より読みやすいのは確かですが。
で、チャーチルの凄さ、偉大さは、まあ予想通り。
政策の立案や著作を仕上げる際の「仕組み」なんかはチョット驚かされたし、興味深かったけど、(目立ちたがり屋で、結構「大失敗」もしてる点も含め)割と知ってることも多かったです。
まとまったものは一冊しか読んでなくても、それだけ断片的に情報が入ってて、それだけで人物像を俯瞰する情報量になってるってこと。
それだけでも「偉大な現代歴史上の人物」ってことでしょう。
僕は彼の皮肉と自虐の効いたユーモアが大好きなんですが、「現代的」にはかなり際どくなっちゃってるってのは、ちょっと寂しいですね。イギリスの学校で配られた35分間の第二次世界大戦のビデオで、チャーチルの登場シーンは14秒だったとか。
何言ってたんだよ、チャーチルw。
本書を読んでる途中で、本作が現役のロンドン市長だということに気がつきました。
最近だと、舛添知事の出張旅費問題で、ロンドン市長として昨年10月に来日したときの費用が比較に挙げられてましたね(もちろん「激安」w)。
本国じゃ人気のある政治家らしく、近々あるEU離脱に関する投票に関して、「離脱賛成派」として声を上げてることが話題にもなってます。
「へえ」
って感じで、チャーチルのヨーロッパ統合に対するスタンスを論じている章(第20章「ヨーロッパ合衆国構想」)なんかを興味深く読みました。
作品が書かれた頃(2014年)にどう思ってたかは知りませんが、チャーチルの思想を敷衍した場合、「どっちとも取れる」ってのは本書でも書かれています。
「イギリスの独自スタンス」てことを中心に考えると、「EU離脱」もあり、かと。
ま、どうであれ、「チャーチル」を参考とするなら、単純に「離脱・反離脱」って話にはならないでしょうね。
「現代にも通じる」
と言ってもいい作品なんでしょうが、単純に「ウインストン・チャーチル」という興味深い人物を知るために格好の一冊だと思います。
「伝記」よりは面白く読めると思いますよ。