鈴麻呂日記

50代サラリーマンのつぶやき

読書録「新・戦争論」

・新・戦争論 僕らのインテリジェンスの磨き方」
著者:池上彰、佐藤優
出版:文春新書(Kindle版)

新・戦争論 僕らのインテリジェンスの磨き方 (文春新書)

新・戦争論 僕らのインテリジェンスの磨き方 (文春新書)


この二人の対談ですからね。国際情勢について、幅広く、それでいて興味深い話が繰り広げられます。
ポイントは「陰謀論に陥らないこと」。
佐藤優氏だけだと、あまりに情報がディープすぎて、「陰謀論」との境目が分かんなくなっちゃうとこもあるんですがw、池上氏が入ることで、そこら辺のバランスが非常に良く取れるようになっています。
言い換えれば、
「池上彰、単なる『ニュースのお父さん』じゃないんだな」
と言う・・・。いや、大変失礼なんですけどw。


ま、正直言えば「間口広げ過ぎ」って感じもあるんですがね。


民族と宗教
欧州問題(ウクライナ、独立運動)
中東問題(イスラム国、宗派対立)
朝鮮問題(北朝鮮、中国との関係)
中国問題(尖閣、中国の民族問題)
アメリカ問題(オバマ、オバマ後)


それぞれで実に興味深い話が展開されるんですが、盛り込み過ぎっちゃあ、盛り込み過ぎw。
出来ればそれぞれについて新書一冊分ずつくらい語って欲しいですね。それくらいの充実度はあるんじゃないかと思わせるところがあります。
(そういう意味だと、ロシア問題とか、慰安婦問題なんかも、もっと突っ込んだ話をしてほしかったかなぁ)


<要するに「嫌な時代」になってきたのですよ。これからの世界を生き抜くために、個人としては、嫌な時代を嫌な時代だと認識できる耐性を身につける必要がある。(中略)嫌な時代には嫌なことがたくさんある、というのをよく知っておくことです。(佐藤優)>


全く同感です。
そしてその認識と耐性が、今の日本社会には欠けてきてるんじゃないかって危機感もあります。
一言で言えば、
「大人になる」
ってことなんですが、これがナカナカ・・・。


<歴史を改めて勉強することが必要ですね。(中略)歴史を読むと「ああ、歴史は繰り返す」と思います。その通りには繰り返さないけど、何か同じようなことが起こる。(池上彰)>


「ヘーゲルは歴史は繰り返すと言ったが、そのとき一言付け加えるのを忘れていた。一回目は悲劇として、二回目は喜劇として」マルクス


この認識はやはり重要でしょう。
そういうことにセンシティブであることが、すごく求められてるんじゃないかと、本気で思っています。


二人の安倍政権に対するスタンスなんかもナカナカ興味深いですよ。
そういや先日の選挙特番でも池上氏は安倍さんに突っ込んでましたね。その裏側にある問題意識なんかも本書から窺えることができます。
手軽に読める、でも「軽く」はない。
そんな一冊でしょうか?