・ブルックリン・フォリーズ
著者:ポール・オースター 訳:柴田元幸
出版:新潮文庫
本書を読む気になったのは、主人公が「60歳」間近の同年代だった…と言うのがあって。
「久しぶりに、ポール・オースターでも読んでみるか」
と店頭で思ったんですが、考えてみたら僕が読んだことのあるオースター作品は「幽霊たち」のみ。
しかも全然内容忘れてるしw。
まあでも面白かったですよ。
<幸福感あふれる>って帯に書いてるけど、まさにそんな感じです。
多彩なキャラが登場して繰り広げるドタバタ劇に、
「オースターってこんな作品、描くんだっけ?」
と思ったんですが、
<『ブルックリン・フォーリーズ』は、オースターの全作品のなかでもっとも楽天的な、もっとも「ユルい」語り口の、もっとも喜劇的要素の強い作品だと言ってひとまずさしつかえないと思う。>(訳者あとがき)
…と言うことのようです。
残念。
このノリなら、続けて何作か読んでみようかと思ったのにw。
それくらい「楽しい」読書時間を与えてくれる作品でした。
もちろんただの「幸福な物語」ではないんですけどね。
2000年5月23日の「再会」に始まった物語は、「2001年9月11日の午前8時」に幕を閉じます。
<それ以前>と<それ以後>で、ある種の時代が一変した瞬間を目前に。
そう言う意味では、<今>もまた、そう言う<とき>を迎えているのかもしれません。
新型コロナ…と言うよりは、インパクトとしては「Black Lives Matter」の方が大きくて深いですけどね。
「アメリカ現代文学」が、このタイミングでどんなふうになっていくのか。
それはそれで興味深いものがあります。
その時、オースターはどんな物語を語るんでしょう。
こんな「幸福」な物語は、もう無理かなぁ…。