・「家族の幸せ」の経済学 データ分析でわかった結婚、出産、子育ての真実
著者:山口慎太郎
出版:光文社新書
僕の基本的なスタンスは、
「<社会>や<人間>を対象にした調査・統計は鵜呑みにしない」
ってのがあります。
「母集団」の取り方にバイアスが入りやすい
調査しようと考えている事象以外の要素が結果に影響するケースが少なからずある
データの「評価」の仕方に測定者のバイアスがかかったりする
長期間の調査・分析が必要で、時に途中の評価がひっくり返ることがある
…等々、まあ注意すべき点がいろいろありますから。
本書でも、「母乳育児」の影響をフォローした調査を紹介していますが、
「1歳までは健康面で効果がある」
「6歳までは知能面でも効果がある」
…となってて、ここまでだと、
「やっぱり、母乳育児が重要!」
ってなるんですが、結果としては、
「16歳になったら肉体面でも知能面でも影響はない」。
この調査はかなり長期間のフォローをしてるのでこういう結果になってますが、6年間(それでも短くはない)の調査だったら真逆の評価になってたって可能性もあるってことですよね。
また本書の作者自身の「考え方」みたいなものも、本書にはそこそこ顔を出していて、統計データでは判断できないことにまで言及しています。
ある種の政策提案のようなものに繋げたいという考えもあるようなので、これは仕方がない(僕は評価します)んですが、<真実>というのは言い過ぎでしょう。
とは言え、じゃあ、
「こんな統計やデータなんかに意味ねぇよ」
となるかと言うと、それもまた違う。
むしろ「常識」と言われている思考停止に揺さぶりをかける意味で、こういう調査や分析には意義があるし、自分としてもフォローして行きたいと考えています。
これだけ社会が変わってきてると言われる中で、どこまで「過去の常識」が有効かどうかは、常に検証していく必要があるでしょう。
ただその時に「データを過信しない」。コレですね。
それもまた「思考停止」だと思いますので。
本書で取り上げられているのは、
「結婚」(結婚相手をどう選ぶのか)
「赤ちゃん」(出生体重、帝王切開、母乳育児の影響)
「育休」(制度と母親の働きやすさ、子供への影響)
「イクメン」(父親の育休が家族や社会に与える影響)
「保育園」(幼児保育の効果)
「離婚」(離婚の子供への影響、共同親権)
どれも興味深い内容です。
作者はそれぞれの調査やデータから「政策」「制度」改革へのアプローチを考えていますので、そういう意味でも「机上の空論」に終わらせない姿勢が僕は好ましかったです。(一方で、「データ分析・評価」という点では…と言うのは前述の通り)
子育て世代は読んでみても損はない作品だと思います。
ただし「鵜呑み」にしないようにw。