鈴麻呂日記

50代サラリーマンのつぶやき

「統計」との距離感を考えさせられました:読書録「『原因と結果』の経済学

・「原因と結果」の経済学 データから真実を見抜く思考法
著者:中川牧子、津川友介
出版:ダイヤモンド社

「原因と結果」の経済学―――データから真実を見抜く思考法

「原因と結果」の経済学―――データから真実を見抜く思考法


一言で言えば、「因果関係を見出す考え方」(因果推論)に関する本。
因果関係:2つのことがらのうち、どちらかが原因で、どちらかが結果である
相関関係:2つのことがらに関係があるものの、その2つは原因と結果の関係にないもの
これを見分けるにはどうしたらいいか、その考え方について整理されています。
作者の一人(中川牧子氏)は教育についてここら辺を使って「常識」に切り込んだ「『学力』の経済学」という本を以前書かれています。。
あれが面白かったんで、本書にも手を出した次第。


因果関係を見極めるチェックポイントとして、本書は以下の3つをあげています。
1 「まったくの偶然」でないか
2 「第3の変数」は存在していないか
3 「逆の因果関係」は存在していないか
その証明が現実と「反事実」との比較。
でも「それがなかったとしたら…」という「反事実」はタイムマシンでもなければ証明できないことなので、それを「実験」や「統計」で「想定」するわけですね。
本書ではその手法として「ランダム化比較試験」「自然実験」「差の差分析」「操作変数法」「回帰不連続デザイン」「マッチング法」「回帰分析」が、それぞれの手法を使った「実例」とともにわかりやすく紹介されています。
この「実例」が面白いので、「読み物」としても楽しめます。
(帯で紹介されているのが、
メタボ健診を受けていれば長生きできる>
<テレビを見せると子どもの学力が下がる>
<偏差値の高い大学へ行けば収入が上がる>
いずれも経済学の有力な研究で否定されているとのこと)


<「ビッグデータ」が流行語となる現代、データを用いた分析は氾濫している。しかし、データはそれのみでは単なる数字の羅列にすぎない。データを用いた分析を「どう解釈するか」ということが極めて大切だ。相関関係を示しているにすぎないデータ分析を因果関係があると誤認してしまうことは誤った判断のもとになる。>


だからこそ「因果推論」を身につけるべき…という主張には100%賛成です。
現在の日本の政策の少なからずが、データやそこからの因果推論に基づくエビデンスに支えられているとは到底思えないことには、強い懸念を感じますし、変えていくべきとも思っています。


ただ、同時に「因果推論」は「解釈」でもあります。
実際本書に挙げられた例でも、「後になって」解釈が変わり、結果が180度変わってしまった例も挙げられています。


エビデンスに基づく政策判断は極めて重要。
ただそのエビデンスそのものにも「解釈」の余地が含まれていることを認識し、常にい「検証」を忘れないこと。


紹介されている「手法」の中でデータの調整や、結果の解釈がされる様子を具体的に見る中で僕が感じたのはそんなことでした。


ま、まずは「エビデンスに基づく判断」で政策が語られないと始まらんのですけどねw。