鈴麻呂日記

50代サラリーマンのつぶやき

今後5〜10年のビジネスを考える上で、コレは「必読本」かも:読書録「アフターデジタル」

・アフターデジタル  オフラインのない時代に生き残る

著者:藤井保文、小原和啓

出版:日経BP社

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現在、「中国」で起きているビジネス変化を具体的な事例で紹介しつつ、その基本的な概念を解説し、日本における今後のビジネスのあり方をサジェストした作品。

「中国」での事例を紹介した作品には、「キャッシュレス国家」なんかもあって、事例は結構かぶるんですが、本書の方がビジネスに近いところにいる人が書いただけに、「ビジネス」という観点で深掘りした形になってます。


<「キャッシュレス国家」読書録>

http://aso4045.hatenablog.com/entry/2019/05/17/120753


主張の概念としては「アフターデジタル」や「OMO(Online-Merge-Offline)」という形で説明されてて、その微妙なあたりは読んでもらうのが一番なんですが、僕自身の理解に即していうと、


「ほとんどの個人がスマホを持つようになった中、あまたの情報はオンラインで行き来するようになっている。ビジネスはその情報を活用するフェーズに入っており、あらゆる接点は<オンラインファースト>が当たり前、<オフライン>はその中での<特別な接点><手厚い接点>という位置付けになっていく。

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その環境下で、<商品売り><定期的接点>ではなく、<オンライン>環境での<継続的(常時)接点>をベースとしたビジネス構築をする必要が生まれているし、そこを押さえなければ、今後の競争環境で一気に劣後するリスクがある。


一方で、デジタル化されるのは<作業>的な部分であり、そこが自動化されることで<人対応>の部分が重視されるという側面もある(結局差別化はここでされることになるので)。

この点は日本が得意とするところでもある。

<アフター>デジタルにおいては(この順番を間違えてはいけない)日本の優位性も十分に発揮される余地があり、そのためにも<オンライン化><デジタル化>は推進していく必要がある」


という感じです。


僕に馴染みのある「保険」の世界でいうと、「保険」はそもそも、「商品売り」という観点からは、

・切り売り:例えば終身保険とか、一時払い積立保険とか

・定期販売:損害保険の多く(自動車保険、火災保険)、定期保険

という整理もできるんですが(もっとバリエーションはあるけど)、「顧客接点」という切り口からは、「コンサルティング販売」もあるし、もっと継続的な「顧客接点」を重視した販売スタイルもあります。

ここら辺、「サブスプリクション・マーケティング」を読んだ時にも考えさせられました。


<「サブスクリプション・マーケティンング」読書録>

http://aso4045.hatenablog.com/entry/2018/01/18/174738


誤解を恐れずに言えば、「アフターデジタル」というのは、このサブスプリクション的な顧客との関係を<スマホ>起点のオンライン環境が作ってしまう(自分がやらなきゃ、他の人がやってしまう)…ということなんじゃないか、と。

本書では「保険」という観点では「平安保険」の事例が挙げられています。

まあ、これをそのまま真似することは日本の場合あまり意味がないでしょうが(医療環境が違いすぎるので)、継続的顧客接点を作ったのちの営業スタイルのあり方は、まさに今求められている営業のあり方だと思います。(かんぽ生命の件なんかを考えればなおさらに)


果たして「継続的顧客接点をどう構築するか?」。


理屈としてはそれが「オンライン」である必要はないのですが、正直言って「オンライン」で押さえられてしまったら、それを「オフライン」でひっくり返すのはそ〜と〜厳しいでしょうね。

(スモールビジネスはあり得ると思います。そういう意味では「メーカー」と「販売店」では戦略が変わる可能性はあります)


「継続的顧客接点」を構築するのに最も有利なのは「キャッシュレス決済をおさえること」。

今の日本での「キャッシュレス乱立」なんかはここら辺を考えてのこと…なんでしょうが、ここは中々、中国のようにはいかんのじゃないか、と。

そうなるとどういう形での「継続的顧客接点」を作っていくのか。

知恵の出しどころではありますな。

(今のところアライアンス…という方向だと思うんですが、その場合UXをどうするかという課題があります。

UXでひっくり返っちゃう可能性はありますからね。これはスマホを弄ってたら実感できます)


スッゲェ面白そうな時代がやってくんねんな〜


と個人的には思ってるんですが、そんな能天気なことは<ビジネス>最前線じゃ言ってられんかもしれません。

あと「高齢者」(正確にはデジタル、オンラインで生きていけない層)の問題もあるかな。

成長曲線にある中国と違って、日本の場合は低成長(停滞)局面にあるだけに、これらの層もウエイトを占めているし、結構力も持ってますから。


でもそういう層に引っ張られて、このビジネス変革・社会変革を逃しちゃうと、結局は後代にツケを回しちゃうことになっちゃうんですけどね。

それをどう考えるのか…。

「高齢者層」に片足突っ込みつつある身としては、複雑な気持ちもなきにしもあらず、ではありますw。

 

PS 「継続的顧客接点」という意味では<郵便局>というのはオフラインでの優位性を持ってたと思います。

そこの活用方法を間違えたことで、<郵便局>という継続的顧客接点の価値はかなり毀損されてしまいました。

一番残念なのは、そこかな。

(オフラインでの継続的顧客接点拠点の維持と言うのは、それ相応のコストがかかるので、そもそもそこに無理があった、とも言えると思います)